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介護日記 (119) 〜全ての命に感謝する心を〜

島は朝から小雪が舞う。なごみの里のハルさん (92) が水分も摂れなくなって、今日で 6 日目。寝たきりのハルさんが里に入所された時、最期の時を決めておられた。息子さんはきっぱりと言う。

「柴田さん。母さんは死の一週間前に自宅に戻してください。最期は家族で送ります」その言葉の強さに驚いてから 3 年が経つが、昨日の事のようにも思える。

私にとってハルさんは特別な人だった。なごみの里を立ち上げ、島の幸齢者様の入所を待ち望んだ。今までになかった道を通ることが不安のように、里への道もまた遠いものだった。そんな中で、看取りの家なごみの里に最初に入った知夫村の人がハルさんだった。私達は小躍りしたい程に喜んだ。本人の希望でハルさんを“ばあやん”と呼び日々の暮らしを楽しんだ。

死を前にばあやんの目は、日に日に澄んでいく。口は開いたまま閉じる事は無い。私は、ばあやんのベッドの高さを一番下まで下ろす。畳の上に座り手を握る。そして肩を抱く。目はしっかりとばあやんに合わせる。ばあやんの口から言葉が出る事はもう無い。2 人きりで、私は、たくさん沢山の“ありがとう”を語りかける。私の訪問中、ご家族は仮眠をとる。長い時間の後に戸外に出ると、今まで見慣れた島の景色がとても鮮やかに見える。そしてご縁を頂く全ての人にありがとうを伝えたいと心が震える。そしてハルさんとの 7 日目、息子さんの想いのままに、ハルさんは大きな息とともに旅立つ。ハルさんの死にそって、職員の一人がこう言う。

「お世話をさせて頂き、達成感を感じています。自分の父に出来なかった事が、まるで父に親孝行をしているかのように、ハルさんと重なります。今まで父に対して後悔が残っていたのですが、その思いが薄らぎ幸福感を感じています。ハルさんに感謝しています」と……。

看取りとは、残された者に大きな幸せを下さる尊い時と教えた幸齢者様に感謝、合掌。

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