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介護日記 (120) 〜太陽に手を合わせ〜

雪の残る島。なごみの里の幸齢者様のベッドからは、太陽に光る海が見える。

今日も、大阪からこの里に戻った正さん (88) は、ぼんやりといつまでも海を見ている。

「正さん。海ばっかり見てないで、少し体を動かしましょうよ。村の先生からにも言われています」

マジックで大きな字を書く。耳の遠い正さんとのやり取りは筆談である。マジックの大きな字を読みながら、ただ笑顔を向けるだけだった。

「耳が聞こえなくなってから、答えんでも皆が良いようにしてくれるからな。ありがたいよ。先生かー。先生はわしが漁師してる時、この島に来てな。わしがカナギ(サザエを採る漁の仕方)を教えただわい。今もしとるかの」

と話が続く。正さんの目は生き生きと輝きながら、やはり海を見つめていた。

海とともに生き続けた 88 年。私が見ても、島の海は一時として同じではない。今、正さんにとって、こうして海をみることが、何よりの心のリハビリなのだと私には思えた。

夕食後、正さんは、愛妻の写真の前に座ると静かに話し始める。

「わしは果報者よなー。まーだ生きとる。なー、芳子よー」

好きな晩酌を飲み、好きなタバコを吸う正さん。歩けないお体でありながら、小さな幸せを数えながら生きていく。その凛としたお姿に教えられる。自らの今を潔く受け入れ、小さな事に感謝する心こそが、幸せになる道と教えた幸齢者様に感謝、感謝。

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