全ての人の尊厳が認められる未来へ
快い潮風がなごみの里をやさしく包み込む。若いボランティアさんが静かな里に賑わいをさそう。そんな中、秋さん (100) の食欲が出ない。食事が摂れなくなって 3 日が経った。診療所の先生を呼ぶ。秋さんは先生に「もう死ぬんだから 注射はいらんよ」と言う。「なんでわかるんですか?」と耳の遠くなった秋さんに筆談で聞くと「わしは偉いからな」と一言。
先生は私のほうに振り向き「まあ、痛い思いをさせんでも。今日はやめましょうかね」。そう言うと、なごみの里を後にした。
「秋さん。どうしたい?」と聞くと「わがとこ(我が家)で死にたいな」と、こともなげに言う。その日の午後、息子さんの運転する軽自動車で自宅に帰る。
自分の部屋に落ち着いた秋さんは「ここはどこだ?」と問う。「秋さん、わがとこだよ」そう言いながら指示す。先に大切にしていた人形ケースを見つけると「あー 良かった。これで死ねる」里では見せたこともない程、フンワリ甘い笑顔になって目を閉じた。まわりに居た者はみんな、その笑顔を見ただけで心の中が温かくなり、私は思わず目頭が熱くなった。
死を潔く受け入れ思いが満たされた時、人は死すら幸せに受け止められると教えてくれた幸齢者様に感謝、合掌。
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