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介護日記 (131) 〜死を身近に置いて〜

島は今日もチラチラと雪が降る。島はまるで水墨画の世界のようで美しい。

昼食の後、若いスタッフと里さん (97) の声がする。

「お風呂入りませんか?」

「いいや。切ないから止めとくわ。それより(死ぬのが)近いやーな」

驚いた若いスタッフは、私のところにその会話を伝えに来る。それを受けて里さんの傍に行く。

「里さん。どうしたの?」

「切ないけんな。もうわしは近いやーな」

「いいや。里さんはまーだまだ逝けんよ。お迎えが来んと逝けんよ。里さんの所にはまだお迎え来てないからね」

「そうか。あんたは分かるんだよね。此処に居ったハルさんはどうだった?」

「ハルさんはね。一週間前から分かっててね。我と家(わがとこ)に帰りたい言うて、一緒に帰って皆で見送ったよ。本当に楽でね」

「じゃあ。秋さんはどうだったね」里さんは不安そうに尋ねる。

「秋さんもね。ちゃんと逝く2週間ほど前には分かってね。寝てる間に逝かれたよ。里さんもそうなったら、私が言うからね。大丈夫。任せといて」

「ばば。そう言われても大丈夫だらーかな? なんか自信ないな」

「大丈夫。本当にそうなったら、あの、いつも話しているやさしいお父さんが迎えにきてくれるから、怖い思わんようになるから。喜んで待つようになれるわね。それまでは逝けんから安心してて」

「ほな。良かった」

「里さん。若い人は心配するから、脅かさんでね。頼むよね」

そして目の前に立ちはだかる死の壁を見ながら、今というときを過ごすことの尊さを里さんと話しながら思う私だった。

里さんの安堵した顔はとても穏やかだった。死を身近に置き、生きることを教える幸齢者様に感謝、合掌。

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