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介護日記(132) 〜障がいは誰のために〜

雪が止み、海は何処までも静かに、その面は湖のように穏やかである。この海は何処に続きどんな人々を癒すのだろうとボンヤリと海を見る私を里さん (95) が呼ぶ。

「いつまで続くんかなー」

「何が?」

「寝たきりのまんま、何時まで生きるんかの」

「里さんが人に尽くした分、尽されるんよ。里さん。お舅さん、お姑さん、お父さんと随分、世話したんやから皆にその分返されてからしか逝けんね」

そう言いながら、里さんの動かない足を摩る。

「そうか。わしはこんな体でも、長生きしても良いんだな」

それを聞いていた若いスタッフが私に聞く「それなら柴田さん。産れた時から障がいを持つ人は、どうしてですか?」

「それはね。前世できっと良いことを沢山した方なんよ。皆から支えて貰いなさいと神仏が障がいを下さったのよね。だから健康な私たちは手を差し出すのが当たり前。障がいを持つ方々が誇り高く生きていける日本であって欲しいね」

こう言いながら、私は全盲の青年と東京を訪れた時のことを思い出す。島からフェリー、バス、電車と乗り継ぐ。島から離れる程に白い杖をつき、私の腕をとる彼に声を掛ける人の数が減る。東京の電車の中、揺れる電車の中で目の見えない彼が立ち続けることの苦痛。誰も声を掛ける人はいない。やっと空いた席に座るときも、遠慮がちに声をかけるのは彼の方だった。

「すみません」

小さな弱々しい声は彼の心のように見えたものだ。そしてその姿は、島では目にした事も無い程に、とても小さく見えた。

今日も里さんは沢山のありがとうの言葉を私達に注ぎながら、不自由な身体で笑顔を向ける。そして日常の小さな喜びを数えながら希望につなげる生き方に感動する私だ。

不自由な身体を私達の前に差し出し、たくさんの生きる哀しみ、喜びを教えて下さる幸齢者様に感謝、合掌。

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