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介護日記 (133) 〜絆を結ぶ時〜

講演の後、里の幸齢者様を本土の港で待つ。今回の出稼ぎに出かける日、転倒なさった静さん (88) の往診を依頼していた。村の先生は、本土に行き受診するようにとの事。

ご家族のお嫁さんとお孫さん(持病がある)のお二人で港に降り立つ。息子さんは脳梗塞の後遺症で足の痛みがあり、来られない。

もうすぐ三月と言うのに、小雪が舞う。

そんな中、小さな軽自動車に車椅子から静さんを移す。本土の病院にたどり着き、レントゲンを撮る。先生は、その写真を見せながらこう言った。

「まー、この年です。手術は止めましょう。もう良いですよ」

入院の準備をしてきた私達は大喜びをしたのだが、その後で今夜泊まる場所を用意していなかった事に気付く。大急ぎでホテルを手配し、静さん、家族さんと一緒にホテルへ。私と静さんは和室に、ご家族は洋室に入る。私は蒲団を敷き、静さんのオムツを替えた後、外出。

その間、静さんは家族さんと心の旅に出かけたと言う。

「柴田さん。おばあちゃんが正気になったんです。近所の人達の話をするんです。でも不思議です。もう 20 年も前に死んだ従兄弟のこと言うんですわ。その従兄弟が死んだ後、そのお嫁さんに随分世話になって、毎日お茶飲み行ったんですがね。やっぱり血縁は強いんですね。でも嬉しかったですよ。ばあちゃん、認知症になってから、はじめて嫁の私がわかったんですよ。恵子さんて呼んでくれたんです。嬉しかったです」

一言で人は救われることを教えられた私だった。そしてその夜、私と静さんは枕を並べて床につく。「早よー。風呂入ってこいや」と言う。風呂から出、もう私が何処にも行かない事に安堵した静さんは何時しか寝息を立てていた。

そして帰りのフェリーの中、静さんを真ん中に、ご家族は楽しい会話に夢中だった。

「障がいがあってもこうして皆に大事にされて、ばあちゃんは幸せです」

お孫さんは一言、そう言った。

ともに時間をかけて、その苦を乗り越えた時、苦は楽しみに変わり、絆を深めるチャンスに変わることを教えてくれた幸齢者様に感謝、合掌。

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