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介護日記 (135) 〜ただ傍にいることの尊さ〜

島はテレビ画面に映るゴールデンウイークの賑わいが他の国の事のように移る程に静かだ。今日もいつもと変わらない朝の訪れ。

「今日も目が覚めた。生きとる。有難いな」

と里さん (95) が寝たきりのお体をベッドの上に起こし、私に手を合わせる。小さな事に幸せを見つけながら、子孫の平安だけを祈る里さんに働ける事の感謝を教えられる。

そんな私に一本の電話。

「手空いてる? 直ぐ来て」

一人で寝たきりの幸齢者様を支える恵子さん (60) からだ。村の先生から昨日、この 2, 3 日が山だがどうしますか? と聞かれる。彼女の答えは決っていた。

「このばあさんがこの家で、じいさんとばあさんを看た様に今度は私がこのばあさんをこの家で最期まで看ます。何処へもやりません。出来る限り点滴して下さい」

そう凛として答えた。一人で母の死と向き合う淋しさとその重さはどんなに耐え難い事か、容易に私には想像出来た。刻々と死が忍び寄り、不安に恵子さんの心が乱れると電話のベルが鳴る。直ぐに駆けつける。幸齢者さまの話に二人で涙する。ただそれだけで、彼女の顔は見る見る安堵の表情に変わる。

「特別な事はないけどね。ただ居て欲しくてね」

そんな中で姉の帰島。その前日、彼女のいつもの肩の痛みは取れ、表情も明るい。姉のいる間は電話は無い。人の存在の大きさを教えられる。オムツを変えることも出来ない姉だが、十分に彼女の心を支えていた。ただ、居るだけでいい。

そして看取りの場に居る私達はまるで戦友のように、何よりも深い、絆に結ばれる。その場にただ居ることの尊さを、その身を持って教えてくれた幸齢者様に感謝、合掌。

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