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介護日記 (138) 〜三人の天使〜

島は盆踊りの歌が海の波間に消えていく。僅か 700 人の島が 3 倍の人口に膨れ上がるこの季節。癒しを求め都会から帰ってきた人々の見知らぬ顔もどこか晴れやかだ。

里を見学に来た都会の女性は呟いた。

「働き者の主人がいて、子供もいる。でも私も働き、時間に追われている。ふと気が付くと何とも空しく、本で見た里に来ました。本は 3 回読み、その度に泣きました。私はなにをすれば良いのでしょう?」

その目は潤んでいた。

私もまた同じ思いをすることがある。都会で講演を重ね、ふと気付くと心が重いことがある。そんな時は島に戻り、静さん (90) の手を握る。そして、ベッドに潜りこむ。

「あの子はまたあんなところで寝てるはなー」

私には見えない姿を見、そして見えない子と語る静さんの世界に入れて頂く。風のように寄り添いながら、私の心は静さんの風を感じ、安らぐ。都会で疲れた私の心はいつしか解れていく。

講演の出先では、夜の電車の中、訳もなく大声を出しながら歩き回る若者がいた。独り言を言い続ける男性がいた。島には無い光景の中で、私の心は行き場を失っていた。そんな私の心を癒して下さるのはいつも認知症で寝たきりの静さんなのだ。

仏教聖典の中に 3 人の天使の話がある。悪事をなした罪人に閻魔様が言う。

「生きている時、お前は 3 人の天使に会わなかったか?」と。

閻魔様の言う 3 人の天使とは、病人、幸齢者様、そして逝く人だと。温かい手を待つ 3 人の天使、今の社会では弱者と呼ばれる方々こそが、私達に愛を運ぶ天使様。こんな尊い事を教えて下さる幸齢者様に感謝、感謝。

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