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介護日記 (141) 〜心の奥に宿すもの〜

ススキが川からの風に揺れる、穏やかな秋。 川沿いの松江なごみの里の 76 歳の真様(仮名)。毎夜、泊まりに来る奥様が私を見つけるや声を掛ける。

「先日、往診に来てくださった先生から良くなったねと言われたんです。ですがね。私の体力を考えるとですね。主人の幸せを思うとですね。自分が看取ると決めてるんで喜んでばかりもね。この間、リハビリも勧められて、柴田さんに毎日して貰うようにと言われたんです。でも、まあ週 1 日でも良いかと思うんです。不思議です。良くなってと祈りながらも……」自らが病院通いの毎日を送る高齢の奥様の笑顔がゆがんだ。

「今日は天気が良いので、散歩にでも出ますか?」

3 年間、寝たきりの真さんの体を抱き起こし、車椅子に移動する。硬直し恐る恐る移られるお姿。奥様はそれを緊張した面持ちで見守る。

車椅子を押しながら、川辺をゆったりと歩き、野の花を見つけては、

「またこの花を父ちゃんと一緒に見れるなんて幸せだよね。こんな日が来るなんて夢のよう」

と言いながら、肩を震わす奥様だった。そのお姿に胸が熱くなる。若いスタッフが夫婦の絆を感じ涙する。

3 年間もの長きにわたり、寝たきりの生活を 2 人で支え合い、いつくしみ続けた暮らし。その暮らしがあったからこそ、野の花に生きる喜びを見出せたのだろう。お 2 人の姿を映す水面を、ゆっくりと鴨の親子が揺らしていった。

毎日の日常の暮らしの中で、どれだけ小さな幸せを数えられるかが、生きる力に変わると言う。この今と言う瞬間は神仏の贈り物。小さな幸せを数えながら、今を大切に生きる事を教えて下さる幸齢者様に感謝、合掌。

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