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介護日記 (143) 〜神仏に手を合わせて〜

正月の 2 日。未だ暗い中、漁船のエンジン音がなごみの里に届く。小鳥は新しい年を歌う。船の音がひときわ高まる中で一艘、また一艘と大漁旗をなびかせて港を後にする。向かいの島に祭られる海の神様に詣でる為に古くから行われる「松なおし」と言う正月のならわし。

その光景をベッドの上から見ていた里さん (97) は手を合わす。

「良い一年でありますように。来年も見る事ができますように」

黙って目を閉じ、静かに祈る姿は神仏に何とも近いように思えた。

そう言えば、先日東京の取材の記者さんがフェリーの欠航で東京に帰れない日があった。その時、彼は島民が祈りを自然と身につけている理由を学んだと言う。

「思わず天に手を合わせていましたよ。動きようがないので、もう一日お願いします」とさわやかな笑顔だった。

寝たきりのお身体で他人の中で暮らす。どんなに死の孤独の中にあろうとも、声を出して泣くことも出来ない。そんな中で背を丸め、顔を伏して手を合わせて祈られるお姿を何度目にしたことだろう。そしてその後きまったように、

「あー。生きててあり難いね」と晴れ晴れと言われる。

尾崎一雄氏の本の中にこんな文章がある。

“死を自覚し、死をすぐそこに控えて、今ここに自分が生きている事を掴む事、それが幸福なのだ。死を常に自覚していない限り真の生の把握、命の喜びはありえない”と……。

こんな私に命の喜びをその身を使って教える幸齢者様に感謝、合掌。

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