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介護日記 (149) 〜良心と魂を重ねて〜

昨夜は、満天の星空にガンを患う友 (52) の“生”を祈り、寝入るまで彼女と約束した祈りの言葉を唱えていた。

いつの間にか朝を迎える。目覚めるといつものように、ベッドの上で生きている事に感謝する。手を動かし、手が動く事に感謝する。足で立ち、立てる足に感謝する。

そんな私の元に急を告げる、一本の電話が入る。彼女の元に駆けつける車中、彼女の笑顔が私に微笑み続ける。家に入ると彼女はいつもの笑顔で私を待っていた。

彼女はいつものように目覚め、温かいタオルで手足を拭き清め、深い眠りに落ちた。そして、家人が用をしている間に、静かに逝ったと言う。

彼女の美しさに思わず、私は抱き上げた。そして頬擦りし、ぽろぽろと泣いた。

「ありがとう。ありがとう。ありがとう」。何度も何度も念仏のように、彼女を抱きしめて、唱えていた。抗ガン剤で髪の毛が抜け落ちた頭に、愛用のカツラをつける。そしてまた、抱きしめる。そんな私に親戚の方は優しく言う。

「ずっと抱いてやって下さい。喜びますから」。私は彼女の傍らで泣きながら「ありがとう」の言葉と共に一日を過ごす。息を引き取った彼女にその日届いた手紙を読みあげると、彼女の顔は更にやわらかく微笑んだ。

その夕、仮通夜を終え、戸外に出ると鮮やかにその景色が私の目に飛び込んだ。そして全ての人に感謝がこみ上げ、迎えに来たスタッフに胸が熱くなった。

彼女の最期に立ち会い、抱きしめておくらせて頂き、また私は彼女の良い心と魂を自らの内に落とす。彼女の生きる力、命のバトンをしっかりと受け取り、これからは彼女と共に生きていく。

最期まで希望と祈りを持ち続ける中で、遺書と葬儀の式次第を書きおいての凛とした旅立ち。誕生と同じように、死もまた命のバトンの受け渡しとその身を持って教えた友に感謝、合掌。

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