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介護日記 (158) 〜今と言う時間の輝きを手に〜

島にも長い冬の後に、恋焦がれた春が来た。

冬の島は毎日が台風の日のように風が吹き荒れ、空がどんよりと暗い。この島に暮らしてとうに 10 年を超え、やっと厳しい冬が好きになった。

満開の桜。鶯の美しい声。キラキラと光る海。そんな中、私の心に四季の歌が届く。

『春を愛する人は心清き人 すみれの花のような僕の友達』

残念ながら、今年はとても寒く外での花見はできなかった。だが、浮腫みのでたお 1 人の幸齢者様の事を思う時、外でしなくて良かったと胸を撫で下ろす。支援者様が桜の花を抱えてなごみの里に来られ、部屋中に飾られる。

「今年も桜が見られて良かった」

とポツリと言われ、その目が潤んで見えた。

この一言が私には、愁(かな)しい。若い私には、来年の桜が見られることを、当然だと思い込んでいる。息をする事が切ない(苦しい)と言われながらも、オムツにと言う言葉も毅然と断られる。いつも思いやりの心をお持ちになり、微笑みを返して下さる幸齢者様の潔さに手を合わせる。

喜び、ときめき、かなしみ、さびしさ、様々な感情を連れて、歩く人生の最期。桜の花の一片に、大きな喜びを感じられる今と言う時間の輝き。未だ未だ腹の座ることの出来ない自分を思う。懸命に希望を見つめ、体の重さを超えて、周りの者達を気遣うやさしさ。幸齢者様の命の重さに押し潰されそうになりながらも手を引かれて歩く。 1 人の人間の存在の大きさを身を持って教えてくださる幸齢者様に感謝 合掌

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