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介護日記 (159) 〜母の愛は深く〜

凍てつく程の冷たい冬、私は春に恋をする。そんな春の真ん中に、島が 1 年で最も楽しく賑わうお大師様参りの日がある。 7 つの集落にあるお堂に接待の料理が並び、村民は朝から弘法大師に手を合わせながら巡り歩く。

例年、伸子さん (93) は年に一度、自宅に帰る日でもある。今年、 1 月末頃から全身の浮腫みがひどく呼吸すら苦しい。「切ない」と言う訴えが多くなる。今年は帰宅が無理とお伝えしなくてはと思いながらも、ためらい、当日の朝を迎える。

既に 1 人息子を亡くし、自宅には時々、本土から戻る嫁しか居ない。

早朝、帰村した嫁の友子さんは伸子さんの大好物の草もちを手作りし、里に顔を見せる。

「ばあさん。今年は寒いし、帰られんよ」と話す。

「伸子さん。良くなったら帰りましょう。お父さんは伸子さんの傍に今も居られます。大丈夫です」まるで、そう声を掛ける私の声は届かないかのように泣きくずれられる。

「武、こらえーよ(許してくれよ)。こらえーよ」「お前を 64(歳)で、先に死なせてなー。こげな親(こんな親)で。武、悪い親だったなー。こらえーよ(許してくれー)」ただ抱きしめて、共に泣く以外、私にはなすすべがなかった。抱きしめたまま、とても長い時間が流れた。

早朝から起きだし姑の為に草もちを作る嫁の友子さんの姿。命の瀬戸際にありながら、亡き息子に詫びる母。家族の絆を教えた幸齢者様に感謝、合掌。

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