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介護日記 (166) 〜心を律する〜

島の朝は鳥の声に始まる。誰に聞かすつもりもなく歌う鳥に我を深める事を教えられる。

「おーい。おーい」と元さん (93) 。

元気な呼び声が聞こえる。

「はい」短く答えて、駆けつける。坊主頭が寒いので黄色の毛糸の帽子を被り、笑顔を向ける元さん。

「足が痛い」と言う。

「足が痛いから、少しベッドから足を降ろしてリハビリしましょう」と言う私に、

「わしの心配はせんでいい。自分の事しっかりせい」と威勢が良い。

ただ一人の養子の息子も船乗りで一年に一度会えるだけ。若い時から無口の元さんのもとを訪れる人は誰もいない。ほとんど聞こえないのに、補聴器をつける事も頑なに拒否。

何も話す事もないが、ゆっくり元さんの傍らに座る。二人で目の前に広がる海の面を見ながら、私は、ただ元さんの背中をさする。共にすごす、こうした穏やかな時間こそが私の宝物。元さんのベッドの上に先日見学者の方から頂いたねこのぬいぐるみがある。若き日に何匹も何匹も奥様がきらうのにねこを飼っていたという。

元気な頃、漁に出ていた海を一日中眺め、ぬいぐるみのねこを時々さすりながら、しっかりと自立されている元さん。

「自分の心を自分で律する事が自立」

お身体は重度障害があるものの、しっかりと自立なさっている元さんの生きる姿勢が私にはまぶしい。私の心を自立に導く幸齢者様に感謝、合掌。

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