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介護日記 (173) 〜仏になるとは〜

ひとつぶ一粒、雨が海に落ちて広がる。北海道、札幌刑務所の皆様に命の尊さを語ったばかりの私の胸に、雨粒のひとつと自らの命が重なる。

そんな時、4月に旅立たれた幸齢者様の話を思い出す。旅立ちの当日、娘さんにこう言われたという。

「私の葬儀の準備をしてきた」

娘さんは優しく「そうね」と答える。

そしてその夜、ベッドの上に座る娘さんの両手に包まれて、静かな旅立ち。両手両足を縁ある人々がさする。娘さんが予定したわけでなく、葬儀社の方々によって進められる葬儀の流れ。不思議にも、その時30分の時間の空白。幸齢者様は自らが晩年お世話になった近隣の方々への挨拶ができるように、娘がこれから生きていくうえで不義理にならないようにと、晩年お暮らしのあったところへ行くようにと段取りをされていたのだった。

幸齢者様も娘さんも、葬儀社の方にその場所のことは伝えてはいなかった。30分の空白を埋めるため葬儀社の方が何気なく口にした寄り道先の地名に、娘さんはとても驚いたという。そして、その地でまた幸齢者様のお顔になじみの方々が集い、感謝の思いを伝えることができた。

私はふと、小学5年の時に私の身におきた不思議な体験を思い出す。小児ぜんそくの発作を起こした夜だった。2間も離れた玄関先で父が医者と話すひそひそ声をはっきりと耳にした。「娘さん、今夜が山ですね。お大事に」父は深々と頭を下げながら、「ありがとうございます」と言う。その姿を私は天井の上から見つめていた。

幸齢者様は、死を前に、人は身体を離れ自らの願うとおりの最期を迎える力を持つと、身をもって教えて下さる。人は死して神仏になるのではなく、それ以前にエネルギーは高まり、神仏と同じ力を持つのだと教えた幸齢者様に感謝、合掌。

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