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介護日記 (176) 〜心満たされて〜

島の潮風に紫色のトウテインランの花がそよぐ。

奥様に先立たれ身寄りがなく、戦争が自らの人生を狂わせたと嘆かれる秀さん(100)。人の良い秀さんは晩年、一人暮らしの孤独の中で他人の非道な仕打ちまで受けられる。

人を信じたいと願いながら頼った人々の裏切り。齢を重ねながら、人生の苦楽を刻まれ、なごみの里にたどり着かれる。

100歳のお祝い会の予定を立てる。そのプランを立てながら、幸齢者様の笑顔を思うだけで幸せを頂く。本当に有難い事。

「今日は100歳のお祝い会です。食堂に出ましょう」

と車椅子を勧める。だが今日は殊更、機嫌が悪い。

「この花瓶、100歳のお祝いに頂かれたので、今日から使わせて下さい」と花瓶を持つと、

「そんな物割ってしまえ」と怒りが頂点に。

みんなでお願いして車椅子に移って頂く。

憮然と体を預けられ、やっと食堂へ移動。里の幸齢者様はお2人。スタッフ5人とボランティアさん5人。食事の後に2本ずつ束ねた花束を10人が持つ。秀さんに手渡し、握手をする。一人、また一人と温かい手に手を重ねる。秀さんの瞳は涙で潤んでいく。そして最後に秀さんはこう言った。

「……有難くて、言葉になりません」

周りに居た誰もが、秀さんのお傍に居て良かったと思えた尊い瞬間だった。心満たされてその温もりが言葉に変わる時、その一言が持つ重みを教えて下さった幸齢者様に感謝、合掌。

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