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介護日記 (178) 〜温かい春風に包まれて〜

海は荒れ、船の泊まる季節がまた島に訪れる。

10 月 28 日。静さん (92) を看取る。そして、里さん (98) はこう言った。

「わしにも迎えが来た。食事はいらん。このまま自然に、自然に」

看取り部屋で逝かれた静さんの話を一言もしていないのに、里さんはそのことを知っているかのように見える。

旅立ちの前に、とうに死んだ人が迎えに来る。もうこんな話は私の中では当たり前のようになっている。

「父ちゃんがとてもやさしく“もうおいで”と、今まで握ったどの手より温かい手で握ってくれた」

里さんの心は父ちゃんの温もりで一杯のようで、そう話されるお顔すらキラキラと光って見えた。

「柴田さんよ。世話になったね。わしは死ぬのは御飯食べながらか、寝てる内が良いな――」

そう話していた里さんは、就寝中、望み通りの旅立ちを果たした。また里さんは、人は望むとおりの死を遂げられると私に教えた。

そして 11 月 10 日、残るお一人の元さん (93) も、東京に住む息子さんのそばにと望まれ、本土のなごみの里へと引っ越しされた。昨年 7 月 15 日の家宅侵入事件以来、入所受け入れを断り続けてついに訪れた島撤退の日。地元幸齢者様との別れの涙。たくさんの方々の真心に包まれて、私は島を離れた。船の中で 12 年の月日が遠くなっていく島影に重なる。

本土で温かい春風を必要として下さる幸齢者様のおそばにいなさいと、死をもって導いて下さった幸齢者様に感謝 合掌

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