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介護日記 (187) 〜丁寧に生きる〜

虫の声が賑やかな季節になった。虫達には秋の訪れがわかるのだろう。

今日は、出雲なごみの里の美容室が開かれる日。朝から里の中に華やかさが広がっている。電話一本で幸齢者様のために駆けつけて下さったのは、若い美容師の飯塚正樹さん(25歳)。物腰が柔らかく、ゆっくりした調子の彼は幸齢者様の人気者。

都会の大きな美容室で働いていた時、指名を取るために町に出てモデルさんを探し、お願いして髪を切らせて貰って勉強したのだという。そんな都会の暮らしに疲れ、故郷の大社町でホームヘルパーの資格をとり、店を持たずに出張理美容サービスをはじめたとのことだった。

お客様は神様ですと、幸齢者様を前に心の底からの喜びをたたえた満面の笑顔を向けて下さる。彼の笑顔はことさら、里の中を明るくする。幸齢者様の髪を手際よく切って下さる姿が、私には、まるで幸齢者様の肩の荷を取って下さっているかのように見えた。幸齢者様のお顔もだんだん晴れやかになる。

カットが終わり、首から入り込む髪の毛を細心の注意で払って下さるその様子に感動した私は、彼に尋ねる。

「凄いですね。その細やかさはどうして身につけたの?」

「寝たきりの方なので、1本の毛でも残せないですよね。気になっても取れないですから」

そう彼は笑顔で答える。

丁寧なカットが終わると、幸齢者様も鏡の中の軽くなったご自分にご満足のご様子。そのお姿を見る度に、いつも私まで心地良さを感じる。幸齢者様の暮らしに合う時間の流れ。それはこのゆったりした中にこそあるのだと、いつも飯塚さんのやさしさに教えられる。

その身をもって、若者に丁寧に生きることを教えて下さった幸齢者様に感謝 合掌

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