1. Home
  2. 書籍・文書
  3. 介護日記 (191)

介護日記 (191) 〜我の心より他に恐れるものなし〜

雪の朝の6時半、携帯電話が鳴る。

「柴田さん、訪問の途中で車がスリップして、坂に落ちて動けません。利用者様へはお電話しました」「怪我は?」「ありません」

その言葉に胸を撫で下ろす。対応を話していると、職員が利用者様のご家族が助けにきて下さったと電話口で言い、安堵の声に変わる。ご家族の方に改めてお詫びすると、優しく「大丈夫だ」と励まして下さった。寒い朝のこの出来事に、温かい心を頂いた。

大変な状況の中でこそ、本当の真心を見るのだと教えられる。職員に怪我もなく、たくさんの温かい心と学びを頂いた雪の朝だった。

幸齢者の皆様は、この雪の中でも何事もないように淡々と暮らされる。

「どうですか? 雪です」と窓を開けると、驚いたように「おー。寒い、寒い。まあ、ご飯も済んだし、一寝入りするか」と横になられる。

訪問中のスタッフから、今度は茶碗を割ってしまいましたと連絡が入る。「怪我は?」まず、そう聞き、なかったとの声に安堵する。失敗は成功の元。心まで冷たくならないでとスタッフを励ました。弁償をと申し出ると、ご家族様は「茶碗なら山ほどあるから良いよ」とやさしいお言葉を下さる。度重なる失敗にも温かい対応。スタッフは勿論、私の心までほっこりと温まった。

どんなことも、いつ、自分が同じ立場に立つかわからない。いつもやさしく、やさしく、やさしく対応できる自分でありたいと、この素敵なご家族様に教えられた雪の一日だった。

居間のストーブは赤々と燃え、ヤカンから蒸気が上がっている。立ち上る湯気を見ながら、小さな私に、よく父が言っていた言葉を思い出した。

「我の心より他に恐れるものなし」

自らの心をいつもやさしくすることの難しさを思う。やさしく生きる事の尊さを教えて下さった幸齢者様に感謝 合掌

活動についてのお知らせ

  • 柴田久美子 講演予定
  • 募集中の研修内容一覧
  • なごみの里 紹介動画

書籍紹介

いのちの革命

『いのちの革命』書影

看取り士日記

『看取り士日記』書影

看取り士

『看取り士』書影

「ありがとう」の贈り物

『「ありがとう」の贈り物』書影