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介護日記 (192) 〜亡き母の心の中に生きて〜

なごみの里の中の幸齢者様は、この雪の中でも何事もないように淡々と暮らしておいでだ。その寝姿を見ながら、幼い頃に私の想いは戻っていく。

小学5年のこんな雪の夜、お風呂上りの私は布団に入ると、ふと昼間した友人との約束を思い出した。

「陽子ちゃんに漫画の本をかしてあげると言ったけど忘れていた。まあ明日でも良いか」

母にそう言うと、母は私の手を握りこう言った。 「くんちゃん。今から行こう。母さんが一緒に行ってあげる。約束を守る事が一番のやさしさ。約束は相手にとって希望なの。どんな小さな約束も、あなたがしたのだから守りなさい」

私は不承不承、洋服に着替え、寒い夜道を母の手を握り友人の家に向かう。友の家の玄関先で漫画の本を手渡すと、急いで外に出た。母は笑顔で、雪の降る中で待っていた。そして手を繋いで家に帰り、布団の中で冷えた足のままに母を待つ。

用事を終えて私の待つ布団に入った母の太ももに、私の冷たい足を入れる。母の柔らかい肌とその温もりを私は今もこの足に残している。母は「やさしさとは、どんな小さな約束も守る事」と、自らの時間を使い、体を使って教えた。その言葉は幼い私の心に母の温もりと共に刻まれた。そんな事を思い出しながら、ふと気付くと幸齢者様は穏やかなお顔で、すっかり寝息を立てておられる。

幸齢者様との穏やかな暮らしの中で、亡き母と出会える幸せを頂けることに感謝、合掌

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