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介護日記 (194) 〜父母に導かれて〜

雪の降る北海道の3月。内観研修の講師として余市町に降り立つ。私が内観に出会ったのは今から15年前。

1回目の1週間、静かな研修所のほんの1メートル四方の場所が私の居場所。自分と深い関係のあった母父を対象に、その出来事を具体的に思い出していく。何をしていただいたのか。何をして返したのか。どんな心配や迷惑をかけたか。この3点を調べる。

1日目は、工面して費用を作り、仕事を休んで参加した事を正直悔やんだ。しかし、2日目の昼過ぎだった。小学5年のある雪の夜の事、持病の喘息の発作を起こし苦しむ私を、泣きながら抱きしめる母の姿が蘇る。同室の内観者に聞こえないようにと口を押さえ、嗚咽を押しとどめるのに必死だった。外は雪。生きていてと祈りながら抱きしめて一夜を明かした母の祈り。母の温かい涙が私の頬に流れ落ち、宝石のように光った。その光を感じたその時、それが私自身が自らの命の尊さに気付いた瞬間だった。

その後、2年間、私は何度も何度も内観を体験し、講師になった。今回参加の61歳の女性、父母に心からの感謝ができないと内観研修に臨まれる。そんな彼女が3日目、涙を流しながら、最後に書く父への手紙にこうつづった。

父は関東から北海道まで、私に詫びるために来てくれました。それなのに私は他人のようによそよそしく振る舞いました。父への怒りで父の気持ちを考える事が出来ず、死の世界に旅立った後もそれは消えませんでした。ですが、今私は感謝の気持ちを伝えたいと願っています。もしあなたが生きているなら、私は御礼を言いながら抱きしめて、逢いたかったと、淋しかった、辛かったよ父さんとつげるでしょう。内観を受けて『幸せな気持ちで生きている』と感じられるようになりました。そちらに逝くまで、もう少し待っていて下さい。

不完全性の自覚に基づく謙虚さを私に教えた幸齢者様に感謝 合掌

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