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介護日記 (195) 〜愛と希望を手に〜

ボランティアさんが早朝から山に入り、ワラビを摘んで来てくれた。スタッフ全員であく抜きの方法を教えてもらいながら、初夏の味に幸せを感じる。

そんななごみの里に、余命半年と宣告を受けた85歳の女性、良子さんが相談にいらっしゃる。一緒に訪れた一人娘さんの目は、赤く潤んでいた。11時からの面談。癌で余命がないと3人の医師に告げられ、入院を勧められたと言う。それでも自分は住み慣れた自宅にいたいと相談にみえた。

私は輝いていた時の話をまず聞きたくて、そうお願いした。18歳の頃から始まり、教師時代、そしてご主人との大恋愛。幸せな結婚生活。待望の娘の誕生、娘の成長。良子さんの歴史を3時間に渡り話される。そのお顔はだんだん赤みがさし、とても元気そうに変わる。話をしながら、良子さんは輝く時代の中にあった。

お昼ご飯の準備ができず、お握りと梅干の簡単な昼食にも「おいしい」と満足そうだった。そして良子さんは最後に、毅然としてこう言った。

「私は、病院にいると病人になります。だから自宅で自分で癌を治します。にんにくに牛乳。毎晩食べます。にんにくは癌に効くんです。この浮腫みは300グラムの黒豆を炒って焼酎につけたのを飲むとひきます。きっと治してみせます。今日は気持ちが良いです。ここに来て良かった」

こう話し、靴下を脱ぎ腫れた足を出される。

私は良子さんの足を摩りながら、祈った。

「大丈夫です。きっと良くなります。娘さん、そしておばあちゃんが大好きなお孫さんのためにも、元気になりましょう。大丈夫。希望を持ち続けて下さいね。大丈夫」

そう繰り返す。娘さんが結んでくれたという、ラメ入りのピンクのスカーフが胸元で眩しいほどに光って見えた。癌に立ち向かう良子さんの覚悟に、私は共に歩かせていただこうと決めた。手を取り合って里の玄関に出ると、良子さんは深々と頭を下げてこう言った。

「来て良かった。よろしくお願いします」

自らの死と向き合いながら、愛する子、孫を想い、最期まで諦めず、凛と生きることを教えた幸齢者様に感謝 合掌

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