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介護日記 (196) 〜魂と魂を重ねる時間〜

北海道大学の喫茶店、桜の花が散る、そんな戸外の席。知人を介して知り合った若い恵子さん。4月30日、夫が天に召されたと言う。私にどうしても、顔を見るだけでもお会いしたいと、10分ほどの予定でお目にかかる。

恵子さんは泣きながら、

「夫は最期まで立派でした。今なお夫を感じていたいと思うのですが。涙が止まりません」

と話され、泣き崩れられた。

「どうすれば、夫を感じることができるのですか」

と問う彼女に、私はこう申しあげた。

「ご主人は、身体はなくされましたが、その心と魂はあなたのそばにあります。そのことを強く信じて、感じてください」

10分の予定だったが、次の予定がキャンセルとなり、1時間に延びた。これも、ご主人がもっとお話しを聞いてと延ばしてくれたのだと、そう伝える。

四十九日、この期間は魂に魂が重なる期間、抱きしめて看取った彼女に彼が重なる時間なのだ。生前と変わらず彼に声をかけ、彼と一緒にお茶を飲みましょうと私は言った。まずは信じること。旅立ちの前、彼は彼女に「お前の傍にずっといるよ」という言葉を残したと言う。

しっかりと魂を受けとった時、お腹の下の丹田に彼の魂が重なり、とても強くやさしく生きていける。温かく彼がいつも見守っていると感じて生きていけると伝えると、彼女はふと、こう話す。

「私の友人のまだ幼い子供が、パパを亡くした時に『パパは僕の中にいるよ』と、そう言っていました」

その時、桜の花びらが彼女の紅茶の中にひとひら舞い落ちる。その後、彼女の顔はとてもやさしく温かい顔に変わる。私達を清らかな風が包む。

1時間の面談を終えて帰る時、私はその彼女のやさしい伸びやかな笑顔に救われた。ご主人はまだ若いのに、全ての準備をして旅立ったと言う。葬儀の準備、そして、お墓のことなど、自分で決めて旅立たったと。死を受け入れて旅立つ時、人は神仏になると、また教えていただいた。逝く人を抱きしめて、魂を重ねながら生きていけばやさしくなれることを教えた旦那様に感謝 合掌

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