1. Home
  2. 書籍・文書
  3. 介護日記 (207)

介護日記(207) 〜愛を深めて〜

爽やかな風が初夏を思わせる。

3年前、松江なごみの里に入所なさっていたヨシさん(86歳)の訃報を聞いて駆けつける。当時、本土に出て初めての看取りの家、入所者さんのいない無念を感じていた私に優しい言葉をかけて下さり、寝たきりの奥様ヨシさんをお預け頂いた一男さんの言葉を今も、はっきりと覚えている。「柴田さん、誰も通った事の無い道を通るのは勇気が要ります。でもきっと皆が理解してくれる時が来る。頑張ってくださいね」

松江なごみの里は、家族の方にも介護を担って頂いていた。それは最期の1%の幸せを全うして頂くためだ。私は松江でも、私が尊敬するマザーテレサの言葉を借りて、こう言ってきた。

「人生の99%が不幸だとしても、最期の1%が幸せならばその人の人生は幸せなものにかわる」と……。

一男さんはいつもヨシさんのために、必ず家庭料理を1品、自分で作って大切そうにポケットに忍ばせて来られる。

「家内が元気な頃は台所に入ったことないんですよ。今は得意ですよ。家の味を忘れて欲しくないのでね。悪く思わんで下さいよ。ここの料理に不満がある訳でないですよ」と、その笑顔が何とも美しい。毎日決まって夕方5時半に里に来られ、物言えぬ寝たきりの妻に尽くされる。

ヨシさんの食事用のテーブルの横、古いタンスの上に飾られたお二人の若き日の写真。白い花柄のワンピースを着たヨシさんがコスモス畑で微笑む横には、一男さんの若く凛々しい姿。お二人で向き合って食事をなさる時、きっとお二人の思いは若き日の輝かしい思い出の中にあるのでは……そう思うほどに仲睦まじい。そのお二人のお姿に、身体に障害があったとしても、心まで病むことのない人間の強さを思う。

一男さんの存在は、奥様にとっても、そして私達にとっても、太陽のように心に温もりを届けてくださった。遺影のヨシさんのお顔はとても若々しく、美しかった。

最期のその時まで、愛を深めて生きていく事が太陽のように生きる事と教えた幸齢者様に感謝 合掌

活動についてのお知らせ

  • 柴田久美子 講演予定
  • 募集中の研修内容一覧
  • なごみの里 紹介動画

書籍紹介

いのちの革命

『いのちの革命』書影

看取り士日記

『看取り士日記』書影

看取り士

『看取り士』書影

「ありがとう」の贈り物

『「ありがとう」の贈り物』書影