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介護日記 (213) 〜命のバトンを受け取って〜

大山が紅葉で赤く染まる。私の最期もこの葉のように輝いて逝きたいと願う。

そんな日に1通の手紙を受け取った。10月末、64歳で旅立たれた男性の娘さんからのものだった。彼女の了解を頂いて紹介させて頂く。

父に医師から余命1ヶ月の宣告に私は戸惑いました。

残されたわずかな時間を、父と共にどう生き抜こうかと……。不安と恐怖を抱きながらベッドに横たわっている父……段々笑顔がなくなっていきました。

私は柴田さんに電話をしました。

「できる限りお父さまのそばにいて、しっかり触れて! 大丈夫だよって伝えて! それだけでいいの。お父さまの温もりをしっかり感じて! それがあなたの財産になるのよ」

その言葉に、私は行くたび父に抱きつき、頬ずりをしました。

父の寛大さ、父の胸の中にいる安心感、必死で生きている胸の鼓動、薬の副作用でガサガサになった爪や指の感触、父の匂いをもったいないほどに感じ取りました。

「お父さん大丈夫だよ。大丈夫だよ。ありがとう。大好きだよ」

愛おしい…病院を訪れた時の至福のひとときでした。

そんなある日、父に笑顔が見られるようになりました。横にいる私たちまでもが笑顔をもらいました。解き放たれたような、幸せそうな印象を受けた2日後、父は眠るように旅立ちました。

「父の最期は私が抱きしめて送る」

そう願っていた私でしたが、それを実現することができなかったのです。間に合わなかった……。何て取り返しのつかないことをしてしまったんだ……。私はまたすぐに柴田さんに連絡しました。

「それはお父さまがお望みになったことなの。だから大丈夫よ! それでよかったの。今までと同じように、お父さまにしっかり触れて!」

父に触れ、「お父さん、お疲れ様でした。ようやく楽になれたね。ありがとう」と何度も何度も伝えました。今までにはないほどに父を身近に感じ、いつも一緒にいる感覚、父に触れることで感じてきた全てのものが、私の身体の中にしっかり収められています。それは、共にいた幼い2人の我が子にもしっかりと手渡されているに違いありません。

父は私たちの中で永遠に生き続ける。決して消えることはありません。私たちは、この命のバトンをしっかりと握りしめ、これからの人生を父と共に歩んでいきます。

旅立つ人からの贈り物、命のバトンを教えて下さった彼女と彼女のお父様に感謝 合掌

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