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介護日記(217) 〜暮らしの中の輝きを見つめて〜

水仙の花が美しく咲く、なごみの里に一本の電話が届く。

「柴田さん、里子さん(84歳)が亡くなられました。胃瘻(直接、胃に栄養を入れる栄養投与の方法)が逆流するようになって、最期の時、ご自分で点滴200CCを希望されました」と。限りなく自分でお決めになられた旅立ちだった。介護者である、お孫さんの絵里さん(31歳)が添い寝をし、呼吸合わせをされたという。

私が見舞った時、自宅の居間にはふたつのベッドが並んでいた。里子さんの介護用と、赤ちゃん用。絵里さんは出産直後だった。そして胃瘻を付けた里子さんは、微笑んで私を迎えて下さった。絵里さんの出産と、里子さんの食事が入らなくなり入院となった時期が重なる。この時、里子さんは自ら胃瘻を選択、どんな姿でも自宅に帰り、ひ孫の姿が見たいと言われた。

絵里さんは産後直ぐから、ご主人と二人で、産まれたばかりの赤ちゃんと物言わぬおばあちゃんを同じように育んだ。赤ちゃんのオムツを換え、その手でおばあちゃんのオムツを換える。物言えぬ二人を見つめ、摩りながら声をかける。

思えば皆そうして大人になり、そうして死に至る。今暮らしの中でこうした光景を目にすることがなくなったのだが、当たり前の事なのだろう。若い絵里さんが私には眩しく光ってみえた。その微笑は、誰よりも美しかった。

その部屋には目には見えない温かいものがあふれていた。神々しいとでも言うのだろうか。その場にいた誰もが幸せだった。そして1年。穏やかな暮らしの中で里子さんの旅立ち。

きっと里子さんの旅立ちの時もまた、この部屋は光に包まれていたのだろう。里子さんの笑顔が私にはとても美しく見えた。

本当に大切なものは目には見えない、そう教えてくださった幸齢者様に感謝 合掌

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