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介護日記(218) 〜抱きしめられて〜

桜の花びらが舞う姿は美しくもあり、また哀しくも感じる。

先日、最愛の叔母を抱きしめて看取る。叔母は母亡き後、母のように私に何があったとしても、何も聞かずに「つらいね。大丈夫だよ」と頭をなでてくれた。

叔母は10年以上もの長き間、パーキンソン病を患う。体重は減少し続け、身体は自らの力で動かすことはできなかった。全介助、言葉も聞き取りづらくなっていった。そんな身体でありながら、いつも私のことを想い、とてもやさしい声をかけてくれた。他者からどんなに否定されたとしても、叔母はいつもやさしかった。人は、たった一人でも無条件で自分を認めてくれる人がいる限り、頑張れることを教えてくれた。

出張中、叔母が危ないと知らされる。すぐに病院にかけつける。もう数日間、自発呼吸をしていないと伝えられ、ICUで眠っていた。手を握ろうとすると、厚いバスタオルに包まれ握ることができない。肌に触れたい。そう思い、頬に頬をよせる。頬の温もりを感じ、いつも私にしてくれたように、叔母の頭をなでる。涙が溢れてきた。15分の面会時間もとうにすぎ、長い時が静かに流れる。叔母との思い出の数々が次々と目の前に浮かぶ。「おじいさんのオムツを一緒に換えてくれてありがとう」、「お茶をよく入れてくれたね、ありがとう」。そんな日常の中に、叔母が風呂あがりの私のオムツを換える姿が浮かんだ。「おばさん、オムツ換えてくれていたのね、ありがとう」。一つ一つの暮らしの中で注いでくれた愛の数々が宝石のように光ってみえた。

私は叔母の温もりに抱かれていた。今まで、看取りの度に「抱きしめて」と思っていたが、実は「抱きしめられて」いたのだと知らされた。

そして、その朝方、叔母は静かに旅立った。

荷物を片付け、宿泊先のホテルフロントに鍵を返すと、フロントの女性がこう言葉をかけてくれた。

「大変でしたね。お疲れが出ませんように」。

その言葉は温かい風のように私の心に届き、まるで叔母の言葉のように思えた。人は抱きしめて看取ることで、逝く人に抱きしめられると教えた叔母に 感謝 合掌

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