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介護日記(219) 〜孤独を癒すのは温かい手〜

庭のグミの実が紅く色付く。子供時代のように口に入れるとほろ苦さに一人微笑む。里のスタッフに手渡すが誰も口にしない。

そんな中に1通の葉書が届く。

「私は癌のステージ5です。2軒あった持ち家も1軒は処分しました。そして、医療は受けないと覚悟を決めました。

困った事が一つあります。私は死を覚悟したものの、亡くなった後、一人で棺桶まで歩けないことに気が付きました。相談にのって下さい」

こんな文面だった。私はすぐにお電話を入れ、その女性に会う。彼女は私の訪問をとても感謝して下さり、手を取ってこう言ってくれる。

「柴田さんがいてよかった。これで私は何も心配することがなくなった。安心して生きていける。“最期の時、玄関を開け、玄関先の椅子に座り、郵便屋さんに見つけてもらおうかしら”とも考えました。でもそれは郵便屋さんに申し訳ないと思い返し、お葉書を出しました。何かあったら連絡します」と笑顔で話す。

在宅死を覚悟した彼女の潔さ。そして、私たちを頼りにしてくれるその女性の凛とした生き方に、私自身、とても励まされる。彼女の電話には、取り急ぎ彼女の自宅近くの看取り士がすぐに駆けつけることを約束して、日々の暮らしを支えていくことになった。

人は誰も、一人で死ぬ事はできない身体。

死の孤独を癒せるのは、抱きしめて送ることしかない。母の命がけの出産により身体を持ちこの世に生み出される。その瞬間に希望と孤独を手にする。自分では癒す事のできない背中があること。自分の身体の中に、自分の手の届かない場所がある事を理解した時、他者の存在が認められるのだろうか。一人では生きる事も死ぬ事も出来ないと受け入れた時、人はやさしく生きていけるのではと思う。

最期の時、全ての人が愛されていると感じて旅立てるように、やさしくやさしくやさしく生きよと私は看取りを通して教えられた。穏やかに生きる彼女の平安を祈らずにはいられない。

勇気を出して葉書を書き、凛といきる事を教えた彼女に感謝 合掌

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