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介護日記(224) 〜愛は美を深めて〜

秋草の小さな花にやさしさを想う頃、一本の電話を受けとる。

「母の検査の結果がステージ4の肝臓がん末期でした。肺にも転移があり治療の方法はなく、後は緩和ケアということになりました。早くて年内、長くても一年はもたないということです。よろしくお願いします」

愛は時間を相手に差し出すことと、母が私に教えてくれた。電話口の向こうの娘さんにそう伝えた。

数日後、退院なさった独居のお母様の自宅に訪ねる。介護ベットを入れて、娘二人で交代で泊まりながらお世話をされていた。窓の外は雨だったが、お部屋の中には明るい空気が流れていた。長く病院勤務をなさっていたお母様は「私は病院で死にたくない。まるで物のように扱われ順番待ちをしてお風呂に入る。決められた時間に起き、みんなと同じ病院着を着て、みんなと同じ食事を摂る暮らし。そして最後は管に繋がれる。たくさんそうした方を見送りながら、自分はもっと人間らしく最期を終えたいと願っていた。最期まで自宅でと言う、私のわがままを聞いてくれる二人の娘に手を合わせています。」と笑顔で話された。

娘さんは「まるで第二の子育てをしているようです。看取りの準備をしながら何かをはらんでいる妊娠期間のように感じています。何が生まれているのかと考えたのですが、それは許しなのではないかと感じます。母と、そして母を許せなかった自分自身を……。少しでも楽しく笑える時間を過ごさせてあげたいと思っています。」とのこと。

病気になる直前まで、十年間ほとんど絶縁状態だった期間があったとは思えないほどに仲睦まじかった。お母様の皮膚にできた、たくさんの湿疹にやさしく薬を塗ってあげる内にだんだん距離が縮まり、嘘のように心の距離もなくなってしまったと言う。自分の限られた時間を愛する相手に差し出すことで、 満たされる心がそうさせるのか、その笑顔はとても美しく輝いていた。

愛の時間の中に暮らすことで、こんなにも美しくなれると教えてくれた  お母様に感謝 合掌

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