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介護日記(232) 〜自然の恵みの中で〜

山道に合歓の花が美しく咲いている。

余命一か月と診断された女性のご相談を受ける。自宅で最期まで暮らしたいと言われているが、第一介護者である御主人、そして御長男はどうしていいのかわからずお電話を頂いた。

御主人はだんだん無口になり、そして御長男も掛ける言葉がない。余命告知はしないと決断される。そんな中で食事の量が減っていく。「どうして食べられないのでしょう」「これから先どうなっていくのかしら。もう……」その言葉に誰も答える術がない。

そして、数日経って病院に入院された。一般病棟に入院が決まる。ご本人に告げないと決断なさり、ホスピスを拒否され一般病棟への入院となる。私にご相談いただいたのは、看護師であり姪である女性からのもの。

彼女は「叔母に何をどう対応していいのかわかりません。看護師の皆さん、ドクターの言葉がとても私には苦しく、余命宣告が私の心を重くしてしまう。同僚であるナースの扱いがとても乱雑で、面会時間が苦しくお見舞いに行くのが辛い。どうすればいいのですか。」と泣いていた。

私は「空を見て、鳥を見て、一緒に時間を過ごしてください。何も話さない時間、一緒に空を見る時間、鳥を見る時間、野の花を眺める時間がきっと叔母様の希望に繋がります。ご本人が生きる希望を捨てない限り、皆さんが捨ててはいけない。余命一か月の言葉に振り回され、余命を数えてはいけない。」そうお伝えする。「私に一番できないことですね。辛くて苦しい。」

そんな会話の中で、父の最期の時を思う。父にも母は余命三か月の告知をしなかった。自宅で父の前では笑顔、そしてひっそりと一人泣いていた。

子供たちが毎日父の部屋を訪ねるようにと父の寝室で金魚を飼う。毎日えさをやる当番が決まっていた。子供たちは必ず父の部屋をおとずれ、金魚にえさをやりながら、そして父の足を手をさすっていた。

父の温もりを私は今も忘れない。

小さな日常の中の自然が私たちに与えてくれる恵みを教えてくれた父母に感謝 合掌

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