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看取り士日記(239)〜母の愛に包まれて〜

夕方の特別養護老人ホームのフロアにはポツリとお1人の幸齢者様がお座りになっている。広いフロアに職員の姿は見えない。何かを訴えるかのようなその方が気になりながらも、私にはその方の手をとる時間がない。

会場に案内してくださる職員の方が私に早くと促す。会場には30人ほどの職員さんが座り、その職員さんは皆様一様にとても疲れて見えた。

講演終了後、担当の事務長さんは、こう胸の内を語ってくださった。

「柴田さん、人手不足で僕が洗濯をしているのが実情です。募集をしても誰もこない。近くの福祉学校も閉校になりました。どうしようもなく、シルバー事業団の高齢者の方を夜勤に採用しました。職員が辞めていくんです。止められません」

介護と言う素晴らしい職場が、今この現状である。

「2025年に団塊世代が高齢になられた時、この現実をどう乗り切っていけばいいのか、頭が痛いですね」とお話しなさる。

深刻な現実を感じて、帰路につく。

その夜に、かねてからご相談をいただいている介護者の方から電話があった。

「母が乾燥がひどくて……入浴を増やしてほしいのですが、週2回から3回に増やしてほしいと施設に申し入れていいでしょうか。部屋に加湿器をおくことを提案していいでしょうか?」と娘さんは遠慮がちに話される。今、施設に幸齢者様を預かってもらう介護者の方々の9割が、施設に本音が言えないといわれている。

抱きしめられて育った私たち。愛する母を幸せにしたいその思いが、切々と伝わってくる。その施設では、6時半を過ぎるとフロアにいることができないと言う。

「母は一言も愚痴を言わず、『あなたがいるから幸せよ』と、いつも言います。この優しさに甘えています」

小さな愛を数えながら懸命に生きていおられる幸齢者様のお姿に、深い愛に満たされたとき、全てを手放せると教えられる。身をもって尊い教えを下さった幸齢者様に感謝 合掌

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