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看取り士日記 (240) 〜息子の役割〜

雪の残る長野に講演会に出かける。

長野県の下條村、養護盲老人ホーム「光の園」。視覚障害者の方を対象とした施設だった。ちょうど3時のお茶の時間をご一緒させていただく。

11月の地震に被災者で家が全壊。全盲と言う障害を持たれるが故に、なかなか受け入れ先が決まらない中、この施設にたどり着かれたと言う。

「息子がここを探してきました。最初はとても不安でした。今までずっと家族と一緒で、家族が私の目になってくれていました。たった1人で、この慣れない施設で本当に大丈夫だろうかと眠れない夜が続きました。でもとても良い所で、すっかり慣れました。もう孤独ではありません。

きっと息子は私が旅立つ時ももういいよと背中を押してくれることでしょう」。

私の方を見ながら淡々と話される。目が見えないと言う事は、私には感じられないほどの辛さの中にあるのだと思うが、その深い笑顔からそれは微塵も感じられない。“息子”とは息を引き取るときに傍にいるものと幸齢者様はおっしゃった。

あの瀬戸内寂聴さんが話されていた「人が死ぬとその瞬間何かがエネルギーに変わり、その熱量は、二十五メートルプールの五百二十九杯分の水を瞬時に沸騰させる」ということ。それを一番受け取るべきなのは男性。だから、「男性は看取り」。そう言い続けてきた私だが、この方の潔さに驚いた。

「最期の時、『もういいよ』と『ありがとう』といった言葉をかけたばかりに、父を死なせたと後悔しています」という声を聞く。この女性のように、息子とは引導を渡す役割があると、元気な時に子供にしっかり伝えておく潔さが必要なのだろう。

爽やかなその笑顔の裏の、芯の強さを教えられる。息子とは最期の息を引き受ける者。そして命のバトンを受け取ると言う最大の役割を持つ。そんな尊い言葉を教えてくださった幸齢者様に感謝 合掌

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