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看取り士日記 (249)  〜生ききるとは〜

秋の空が高く澄みきっている。

今日は先日看取りをさせていただいた、ご自宅に訪問する。まだ49日を迎えていない。ご家族の皆さんは笑顔で迎えてくださった。

認知症の良子さん、自宅で息子さんの腕の中で旅立っていかれた。そして呼吸停止から5時間後、嫁ぎ先から駆けつけた娘さんの腕に抱かれる。まだ胸とお腹が暖かかった。

臨終の前に、息子さんから呼吸の変化に気付きご連絡をいただく。「呼吸を合わせてください」と言うとすぐに呼吸合わせをしてくださる。そして抱きしめられて4・50分後、穏やかな呼吸に変わる。

その4 、5分後、抱きしめられた腕の中で旅立っていかれた。

「何しろ初めてなので。自宅で看取ろうと決めたものも不安で、どうして良いのか分からなくて」とお話が続く。

ご高齢のお父様は良子さんの大好きだった赤いスカーフを出しながら闊達に話してくださる。

「僕は手を握ることしかできなかったが、息子が抱いてくれ看取るということを教えてくれた。病院での最期を覚悟していたが、こうして抱かれて僕も逝けると思うと安心です。抱きしめられて産まれたのですから、抱きしめられて死ぬのが人なんですね。何よりの親孝行です。遺影の写真が笑顔なので救われます」

白い歯がまぶしい程の遺影の良子さんの顔が殊更に輝く。

デイサービスで良子さんが作られた数々の作品を見せてくださった。

お話が進む内にそのお部屋の空気が清らかに澄み、良子さんの魂のエネルギーが空気を変えていったと誰もが素直に感じた時間だった。

丁寧にゆっくりと看取ること、丁寧とは1人の人に4人の心でやさしく、やさしく、やさしく寄り添うこと。看取るとは旅立つ人の魂のエネルギーを受け取ること。

最後に息子さんが静かにこう話す。

「母は、妹からの電話を聞いて安堵したかのように自分で息を切りました」と……。生ききるとは、自ら最期に息を切ることと教えて下さった良子さんに感謝 合掌

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