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看取り士日記 (253)  〜温もりのある豊かさとは〜

3月初旬、長野は冷たい雪だった。

長野は私にとって思い出深い場所。今から15年前、『畳の上で死にたい』というテレビ番組で、幸(高)齢者様が寝たきりで独居でありながら、ヘルパーさんの訪問だけで暮らされている映像が放映されていた。私はこの映像に魅せられて長野に出向き、テレビに映っていらした男性にお会いした。

「本当にお一人で大丈夫ですか」と、手を握りながら聞く私の言葉に「最期まで、たとえ雪でヘルパーさんが来られなくなったとしても、私はここで暮らしたい」そう力強くおっしゃったのが心に残る。

今回の講演は大町市の地域包括支援センターからのご依頼。2025年、この国は団塊世代の高齢化が進み、また医療費削減から看取りの場が自宅へとシフトして行く。その中心となるのが地域包括支援センター。

控え室からお手洗いに行くと、80代の女性が私を見つけ、声をかけられた。

「一人暮らしでも、私はずっと我が家で暮らしたいです」

そのお姿を今は亡き母に重ねた私は、思わずその女性を抱きしめる。初対面にもかかわらず、その女性はその場で大粒の涙を流された。

雪の中でのお一人暮らしはどんなにか不安だろう。この女性との出会いは私の心に火をつける。懸命に生き、最期、自分の思いがかなう社会。そんな社会を創りたい――そう私は壇上で皆様にお話しをさせていただいた。

講演後、控室で担当の課長さんが私に向かって熱く語ってくださる。

「柴田さん、僕は看取る者の安心を形にするのが役割と思い、その中で医療と福祉の連携を訴え続けてきました。今、改めて『看取り士』の役割を広めていきたいと思います」

人生最期の一番大事な時、わがままで我慢をしなくても、それを支える人たちがいること。それが本物の豊かさだと女性の震える声が教えてくださった。声をかけてくださった幸齢者様の勇気と、皆様とのご縁に感謝 合掌

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