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看取り士日記 (258)  〜愛は奇跡を〜

朝顔の花が支柱にしっかりと蔓を絡ませ、「固い絆」と言われるその花言葉の通りに、美しく咲いている。

余命1ヵ月と診断されたお父様(78歳)。

「柴田さん、病院から家に帰りたがっています。最期まで家で幸せに暮らしてもらいます。お願いします」

こんなお電話をいただいた。10数年前より、度重なるがんの手術、既に食事が取れない状態であった。依頼者の娘さんは食事療法を長く学んでこられた方だった。癌の快復に良いと言われるものを何時間もかけてスープに仕上げる、すりつぶして流動食として渡す。たくさんの涙ぐましい努力をなさっていた。

傍で、お母様がプリンを冷蔵庫にお入れになった。

それを見たお父様は「食べたい」と、そうおっしゃった。

お嬢様は「砂糖が体を冷やすからダメよ」と即座に拒否。

「どうぞ差し上げてください」と言うと、遠慮がちにお父様は一口、一口。

嬉しそうに、みるみる全て食べられた。

娘さんは、その光景に驚きながらも、娘さんの強い愛、「生きていてほしい」と言う願いが、お父様の限られた時間を不快と言う時間に変えていることに気づかれた。

落胆の表情を浮かべながらも、「頑張りすぎていたんですね」と、微笑まれた笑顔は安堵したかのようだった。

終末期における食は「好きなものを、好きなだけ、好きな場所で」。

人生の最期に、このぐらいの贅沢をしていただくことが豊かさではないだろうか。青空の下で、家族に囲まれて庭の好きな花を愛でながら――それはどれほど豊かな時間になることだろう。

娘さんは冷えた麦茶を飲みながら、「急ぎすぎていたのですね。まず父のペースに合わせ、ゆっくり歩くことから始めます」と。

愛は全てを越えて必ず結果を出す。娘さんの食事療法は「身体には良いのよ。お父さんが大事だから、少しずつ食べてね」と、少しずつ差し上げられることをお勧めした。

「柴田さん、必ず父に奇跡をおこします」と微笑まれた。

燃えるような家族の愛を涙とともに教えてくださった皆様に感謝 合掌

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