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看取り士日記 (274) 〜尊い手仕事〜

寒椿の花が固い蕾をたくさんつけて、冬を待つ頃になった。

愛する人を看取りたいと思いながら、最期に立ち会えなかった里子さん(52歳)からのご連絡を頂く。最近こうしたご連絡がとても増えた。

「最期に立ち会えなかったの。どうすれば良いの?」

泣きながら心の底から絞り出す様に話される声に無念の想いを受け止める。愛が深い程に、距離が近い程にその想いは重い。

そんな時は、こう伝える。

「大丈夫です。まだまだあたたかいです。背中から手を入れて。お腹にも。あたたかいうちは大丈夫です。間に合って良かったですね」

お身体が有る内は大丈夫。長い時間が経ったとしてもそのぬくもりが戻ることを数々の体験から教えられた。身体を寄せて触れる。看取りとは目で見て手で触れること。手で触れて愛する人のぬくもりを手に移すことで看取りは出来る。臨終コンプレックス(看取りに立ち会えなかったと言う暗い心)、こんな言葉が日本から消える日も近い。

初七日は無論、四十九日までは愛する人の聴覚と臭覚は残っている。特に初七日までは生前と変わらない。生前と同じように、楽しかった事を語り、ご一緒にお茶を飲む。また愛する人がお好きだったものを残された家族が食べること。こうした豊かな時間を持つことで看取りは完成する。

昨日取材で出会った若い記者さんが言った。

「先日、父を病院で送りました。仕事が忙しいと僕は父と本当に向き合うことがなった様に思います。二度とやり直せない場面だからこそ、大事にすれば良かった。でも、どう大事にすれば良いのかすら分からなかったのですが。

日が経つにつれて、心の中の後悔と言う冷たい石が大きくなっていきます。だからこそみんなに看取りの時間の尊さを伝えたいですね」

笑顔で取材を終えた。

スピードと効率の名の元に看取りの文化を変えてしまった日本だが、人を愛する心は変わらない。

今日も深い心の奥にあるやさしさを教えてくださった人達に感謝 合掌

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