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看取り士日記 (275) 〜即身仏の世界〜

ろうばいの花の香りに癒される頃だった。

ご相談のご連絡の後、すぐに駆けつけると、お電話してくださった奥様はご主人様の入院されている緩和ケア病棟で倒れ、点滴を受けておられていた。

ご主人様の癌を治すためにこれまでに様々なことを試され、ずっと付き添われてきて、体力の限界に来ておられたご様子。その日からご主人様の病室に入らせていただく。病室に入ると、そこは明るく清らかなエネルギーで満たされていた。

ご主人様はすでになにもかもご承知で、穏やかな瞳をされていた。ここは神仏の領域なのだと心身ともに引き締まり、やがて私も清らかなエネルギーに包まれる。奥様は、そんなご主人様の状態を今は受け入れ、私ども看取り士を呼ばれたのだった。

「なんとか生きて欲しいといろいろやってきたけど、やっと私も気持ちを切り替えられた」と。

それまで看取り士を呼ぶのは見送りの準備をしているようで、抵抗を持っておられたようだった。奥様ともお話をしながらご主人様に寄り添わせていただく中で、看取りとは命の最期をカウントダウンして待つものではなく、最期まで命を輝かせ生き切ることに寄り添うことだとわかっていただけ、奥様のお気持ちも整っていかれる。

それを待っていたかのように、ご主人様は痛みや苦痛もなく穏やかに逝かれた。奥様は膝枕をして、亡くなったご主人様に声をかけ続けてくださった。

つい最近、奥様とお会いしてご主人様のことをお話しする機会があった。「あの時、夫は即身仏になっていっていたのだと思う」そう言われた奥様に、深いご主人様への愛を感じ、看取りの期間、おふたりに寄り添わせていただいたことに感謝で胸がいっぱいになった。

外は初雪に陽の光が跳ねて眩しいほど。

ご主人様の病室に初めて入った時のような眩しさだった。

限りある命であることを最期の輝きの中で教え導いてくださった利用者さまに感謝 合掌

担当看取り士 中屋敷妙子

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