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看取り士日記(279)〜言葉にできない感動〜

 紅のつつじの花が鮮やかに美しい頃だった。

 先月、旅立ちのあった奥様を訪ねた。

 小さな仏壇のやさしい笑顔の健さん(享年66歳)にご挨拶をさせて頂く。

 みんなの話の間中、健さんの大好きだった愛犬ふーたは奥様の腕の中だった。

旅立ちの様子を淡々と語られる奥様の様子に安堵する。奥様がはじめてベッドで添い寝をなさってその早朝だった。眠っている間に奥様に抱きしめられたまま、健さんは旅立たれたと言う。「柴田さん、ここに主人がまだいるようです」と終始、笑顔で話される。

「大好きだったビール、毎日変えたほうが良いですか?」

「お花が痛むので、ブリザーブドフラワーです。大丈夫でしょうか?」

と、次々に質問をなさる。

「居間に置いていたベッドも片付けました。大きなテーブルも、もう私ひとりでは大きすぎて、処分しました。居間には何にもないんです。でも主人は変わらずにいてくれるんです」と。そして最後に「柴田さん、私は一人ぼっちになりました。私を看取って下さい」と言われる。

「主人が柴田さんを紹介した時、看取り士さんはもうひとりの家族だよと言いました。その言葉の意味を、主人が亡くなって初めてわかりました。主人は私が一人きりになることが分かっていて、柴田さんを紹介したのですね」

 健さんの言葉の深い意味を、そこにいた誰もが強く感じる。言葉にできない感動、あたたかいもので胸はいっぱいになり、皆で泣いた。健さんの深い愛がその場にいた皆の心に届き、幸せに包まれた。命は永遠であることを、また教えられる。

 旅立たれて2か月、奥様と健さんの交流は深まっていた。

「夜になると二人で長く話すんですよ」と言われたように、看取りは旅立ちの後もたくさんの導きをくれる。

 看取りは熟成していくもの、命は永遠と教え導くお二人に感謝 合掌

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