全ての人の尊厳が認められる未来へ
静岡県出身。 198X 年生まれ(自己申告)。
以前は静岡県の特別養護老人ホームに勤める。その職場の同僚に柴田代表の著書『「ありがとう」は祈りの言葉』を薦められ、それを読んだ後に講演を聞き、更に見学を経て、 2005 年 6 月よりスタッフとして勤務。
なごみの里に来る前の特別養護老人ホームを含め、合計 3 ヶ所の特養のスタッフを経験。
宮本: 今まで住んでたところっていうと、静岡……ずっと静岡?
相田: いや、短大で別のところへ出たり、海外行ったり、ふらふらしてます。
宮本: ふらふらって(笑)。
相田: ふらふらと(笑)。ただ、基本的には静岡。 I Love 静岡です。
宮本: ここに来る前も静岡?
相田: 静岡です。
宮本: 私、静岡に行ったことはないんですけど、どんな感じなんですか?
相田: 都会でもなく田舎でもなく……でも、日本の中間なので出やすいです。東京に行くのも、ちょっと関西に行くのも。
宮本: 関西は遠いんじゃないですか?
相田: 近いですよ。車で行くのが好きなんで、車でふらふらと行ったり。
宮本: 車でふらふらと関西まで。
相田: そう。主には関東ですが。
宮本: なるほど、よくわかりました。で、そういうところから、ここに来てどうでしたかね。生活というか。買物する場所がないとか、シャワーがない*1とか、水洗トイレ*2がないとか。沢山ありますけれども。
相田: シャワーがなかったのは、今までシャワーを使ってたので、ちょっと……うーん、不便だなーとは思いましたけど、何とか今は慣れてきたかな。服も別に、なければないで(笑)。
宮本: 服を買いに行く場所がないですもんねー。
相田: そうそうそう。で、友達とか親とかも色々送ってくれるから、月に 1 回出島した時に(足りないものは)買えば、生活は何とか……今は何とか落ち着いてます。
宮本: 逆にこちらに来て、良かった点はありますか?
相田: 手作りのものが差し入れされることかな。野菜もそうだし。料理したものとか。
宮本: 都会でいきなり戸を叩いて来るなんてこは、なかなかないですもんね。
相田: コンビニとかそういう便利なものがない分、そういう手作りのものが来る。それはすごいと思いました。
相田: では、終了(笑)。
宮本: いやまだひとつしか聞いてないんですが(笑)。では、なごみの里に入ろうと思った理由について、詳しく聞かせてください。
相田: 大まかに言うとー……。
宮本: 「詳しく」聞かせて下さい(笑)。
相田: うーん(笑)。こう、前のところで悩んでたっていうか……ちょっと行き詰った時に、友達に柴田さんの本を貰って、一度ここに見学に来たいと思いまして。それで見学させてもらって、それが縁で。
宮本: 縁で。えーと、行き詰った時という話をしましたけど……。
相田: しました私?(笑)
宮本: 今言いました(笑)。
相田: まぁ、色々ありまして(笑)。
宮本: 色々ですかー……。
相田: プライベートな部分ですけど。
宮本: あぁ、プライベートな部分でも。
相田: うん。もちろん、自分がやってるケアが本当にその人にとっていいのかどうかっていうのもありました。本を読んで柴田さんがしているケアがすごい深いところまで本当にその人にあったケアというか……何ていうのかな、生活を支えてるっていうのにすごい感動しまして、私もそういうケアをしたい……その時は看取りとかのことは自分の中でわかっていなくて、ただ深いケアを学びたくてここに来ました。
宮本: 自分の勤めている特養に対して「これはおかしいんじゃないか」というところはあったんですか?
相田: 私は 3 ヶ所行ったんですけど、だんだん良くなってるんですよ。で、最後にいたところは自分で入ってもいいと思ってました。入浴も 1 対 1 で、全員区別することなく入浴介助、 1 人の人が全部やる。
宮本: この人に対してはこの人、みたいな感じで。
相田: そうですね。 1 人が入浴はもうずっとつく。散歩も天気がよかったら自由に外へ出れたし、家族も結構来てくれた。旦那さんが入ってその奥さんが……毎日じゃないけど、週 3 回とか必ず来てくれて、一緒に介助をしてくれて……だから比較的よく家族が来る施設だったから、そんなに……。「施設も変わってるんだな」って。
宮本: なるほど、じゃぁ最後の特養に関しては悪くはなかった。
相田: はい。悪くはない。
宮本: じゃぁ特養に忸怩たる思いがあって、というわけでもないと。
相田: だけどその中でも、自分の提供しているケアがその人のために本当に良いのかっていう思いもあって、どこかで悩んでる部分もあって……ちょっと都会から離れたいなーって(笑)。
宮本: 私の知らないところへ行ってみようと(笑)。
相田: そうそう。そういう感じですね。
宮本: 今までの特養、 3 ヶ所ということでしたけれども、そこと、ここの一番違うところっていうのはどこですか?
相田: 人数(笑)。
宮本: あー、それは確かに違う(笑)*3。
相田: うん。それとお年寄りさんがもう違う。本土の幸齢者さんとここの幸齢者さんが違うから、多分ここのやり方も違うと思うんですよ。
宮本: どのように違うんですか?
相田: しっかりと自分を持ってる。私は今までずっと 3 ヶ所の特養で認知症をやってきたんですよね。だから余計にそう思うんですけど、ここは認知症があってもちゃんと自分を持ってる。何ていうのかな。とにかく違う。根性が違う。こんなに自分自身をもってしっかりしてる幸齢者さんは、はじめてでした。だから最初に戸惑いもあったし、どう対応していいのかわからいというか。
宮本: ふむ。それと比べて、本土の方はどんな感じなんですか?
相田: 自分を持ってはいるんだけど、ケアを職員の都合に持っていくことができるんですよ。でもここはたとえ認知症でも自分の……ちょっと言葉が難しいんですけど。何ていうのかな、自己主張というか……。
宮本: 自己主張が激しい?
相田: まぁ、それもありますけど(笑)。
宮本: 「わしゃいやじゃ」とか(笑)。
相田: だから本当にその人のペースに合わせて、無理にこっちのペースに持っていくことはできない。
宮本: 逆に本土のほうは結構職員のペースに持っていける。
相田: 最後にいたところは結構自由に……例えば(お風呂に)夕方入りたい人はなるべく合わせるようにしたりとか。パンが食べたいって言えばパンだったりと。なんですけど、やっぱり職員が業務をやりやすいようにちょっと持っていけるところがありました。それに対して、ここは午前中ゆっくりしたいって言えばもうケアはしない。施設の場合は午前中からケアをガンっ(と言いつつ机を叩く)てもってかないと、後が動けなくなる。
宮本: 普通の施設っていうのは、ノルマというかやるべきことみたいなのが決まっているんですか?
相田: 例えばお風呂は最低週 2 回とか。
宮本: 「しなければならない」?
相田: ならない。それはもう決まってます。体調不良の時は清拭とかで対応しますけど。
宮本: 「それをやらなければならない」というのがあるわけですね。それに対して、ここは基本的には決まっているけどなくてもいい、という感じですしね。そういうところが違うと。
相田: です。
宮本: わかりました。
相田: ます。まる。……終了(笑)。
宮本: 終了じゃないです(笑)。
宮本: ここに入って得たものはありますか?
相田: 得たものですか。
宮本: 得たもの。お金は得てませんけれども。
相田: そうですねー(笑)。
宮本: はい(笑)。
相田: 幸齢者さんからなんですけど、全ての物事に感謝する心。必ずオムツ交換の後に、手を合わせて……合掌っていう意味もここではじめて知りました。オムツ交換のときとか、ご飯を食べたときも、ご飯を持っていったときも、必ず手を合わせて「ありがとう」って言ってくれる。それは今まで見たことがなかったです。
宮本: え、合掌はともかくとしても、本土のほうでは「ありがとう」というのはないんだ。
相田: 基本的には、あんまりないです。ケアの仕方にもよるんですけど、認知症になるとだんだん寝たきりになってくる。そうなるともう話せないんですよね。こっちが言っても応答がない、返事がない。本当にもう「生かされている」ような。そういう寝たきりの人を見てきたんで。だから、オムツ交換に対してのありがとう、日常に対しての「ありがとう」、毎日「今日も無事で元気に過ごせますように」ってお祈りもしてくれる。そういう感謝をする心っていうのは……はじめてです。自分も強い人間になりたいって思ってここに来たんですけど、そういう強い……ちゃんと全てを受け入れて感謝を忘れずに生きていく姿というか、そういうのが、すごい、ほんとに人生の勉強になりました。
宮本: えっと、では…………。
相田: 終了ですか?(笑)
宮本: いえ(笑)。では、ここでの最大の娯楽とは何でしょう? 静岡だと生活が便利で、何でもできるみたいなところがあると思うんですけど。
相田: 娯楽…………。うーん、何だろう。時間に追われずにゆっくり、本を読んだり……。
宮本: 本を読むこと。
相田: 本読みますよ? こう見えても(笑)。
宮本: いや「こう見えても」って何も言ってませんが(笑)。
相田: うーん……なんか本当に時間に追われずにゆっくり過ごすことができる。空を眺めたりだとか、海の側で生活するっていうのもはじめてなんですけど、本当に海が穏やかだと隣の島っていうか無人島が何かすごく近く感じるときもあるし、夕日が真っ赤で怖い時もあるし……綺麗な時もありますよ? それに月もすごい大きく見えるし……。時間がゆっくり……それがもう全ての娯楽だと思います。結局、静岡だと、娯楽……友達と会って遊びに行ったり飲みに行ったり、仕事をバタバタして、家へ帰ってまた追われる。別に追われるほど仕事をしていたわけじゃないんですけど。こう、時間をゆっくり過ごすことはなかったなー。
宮本: あぁ、確かにないねー。
相田: ないねー。
宮本: 何かこうやることやることやることやることやることやることやること…………。
相田: そうそうそう。そういうのがあって、うん。
宮本: あんまりゆっくりすることができなかったと。
相田: はい。まぁ、何か仕事も娯楽っていう感じも(笑)。
宮本: ゆっくりできて?
相田: こうゆっくりできて、笑いながら仕事ができて……かな? って思いますね。
宮本: 相田さんが入った後にアキさんが亡くなったわけですよね。そんな相田さんにとって、「死」とは何ですか?
相田: うーん…………。あの、私の体験談*4を渡しましょうか? ……なんだろうね。一番最初の施設のときは死に関わってましたけど、もう遠巻き状態でしたしね。
宮本: 遠巻き状態?
相田: 怖くてもうそばにいけないんですよ。発見することもあったけど、すぐに先生を呼んで処置とか。もう先生任せ看護婦さん任せ。特にここ最近だと、状態が悪くなると即病院送りになって「亡くなられました。お通夜は何時です」っていう報告だけとか。結局、死に近い仕事をしていたけれども、死に関わることもなくて。何ていうのかな、罪悪感? 亡くなった後に自分のやったケアが悪かったから、亡くなったのかなって。そういうものしかなくて。怖いっていうのもあったけど、もう本当罪悪感と後悔しかなかったんですよね。結局悪くなって病院送りになって、そのまま「亡くなった」って報告を聞くしかなくて。
相田: だけど、このアキさん。私が来た時にはすでに状態が悪かったんですけど、最後にアキさんの家へ帰って添っている時のことなんですけど、身体的には痛みを感じてもいいのに、ほんとに表情にも出さなくて常に微笑んでいる。オムツ交換でも声は出さないけれども「ありがとう」って、こう「合掌」(と言いながら合掌の仕草)。こんなにも穏やかなものなのかなって。もう病院とかで状態が悪いと無表情というか苦しんでいるというか、そういう表情しか見ないで終わってたから、そういう……微笑んでいる笑顔の表情にもすごいびっくりで。最期も……うーん、本当にそのまま亡くなられて……達成感っていうのもおかしいんだけど、「死」に対して少し怖さがなくなったっていうか。こんなに穏やかに逝けるというものなんだって。その表情を見て、そう思いました。
(他スタッフから仕事のことで相談あり。 5 分ほど中断)
宮本: では改めまして。
相田: え、終了? 終了?(笑)
宮本: 終了じゃない(笑)。話を戻しますけど、やっぱりそういうふうに 1 回看取ったことがすごい大きかった?
相田: 大きかったですねー……(感慨深げに)。うん、ちゃんと「死」を正面にすえて「死」と向かい合うことができた。本当にそれは皆さんがお互いのためにやってほしいですね。
宮本: お互いのため?
相田: 亡くなる人、見送る人。
宮本: なるほど。
宮本: ここで一緒に過ごされている幸齢者様とはどんな方たちですか?
相田: 癒し(即答)。
宮本: 癒されてますか。
相田: 癒されてます。
宮本: 話していると癒される?
相田: うん、それと笑顔と。ちょっとした行動でも……もともとその認知症をやってきたのが、その行動が好きだから、突拍子もない行動が好きなんですよ、面白くて。だからこう何ていうのかな、柴田さんがここに入った時に「勤務する時に自分が幸せじゃないと思ったら、来なくていいよ。休んでいいよ*5」って言ってたんですけど、でも反対に癒されてます。それで元気になる。
宮本: ここで元気になると。
相田: そういうことです。やっぱり人生の先輩っていうか、この離島の厳しい環境の中で暮らしてきたって、ほんとすごい。本土では「人生の先輩先輩」ってね、口では言ってても、どんなに調査票を貰ってもその人の背景が見えない部分があったけど、こう接して口調とかちょっとした言葉で見えてくる。ほつれたところを直しながら「こういうのを着て、本当に苦労してきた」って。その中でもその事実をちゃんと受け入れて、生きてきた。本当に自分には絶対できない。そういう苦労をしてきたけれど、それを自分で後悔していない。うーん……本当に、生き方を学ぶことができる。
宮本: そういうところはやっぱり今までは結構難しかった? 一応会話をしているとそういうのは出てくるものじゃないかな、と私なんかは思ったりするんですけど。
相田: いや認知症の……。
宮本: あー、そうか。
相田: 本当にとんちんかんな会話をしてましたから。だから、その昔の背景とか生活が見えてこなかった。なんか言葉で「人生の先輩」ってわかっても、全てをやっぱりわかっていなかったです。
宮本: 将来はどうしましょう?
相田: 将来私は幸せな結婚をします。素敵な旦那様と出会って幸せな結婚をします。
宮本: 幸せな結婚をして、子供を生んで、幸せな家庭生活をおくって、幸せな死を……。
相田: はい、迎えます。
宮本: 絵に描いたような将来ですね(笑)。
相田: あはは。いや、実現します。ということで、募集してます(笑)。
宮本: じゃぁ「われこそは」と思う人は、是非なごみの里までご連絡下さい(笑)。……まぁ、そういう冗談はともかく。
相田: 冗談じゃないですよ? 真剣なんですけど(笑)。
宮本: わかりました。じゃぁ、素敵な旦那様に出会う前まではどうしましょう。ずっとこの道なんですか?
相田: はい。
宮本: もしかしたらそれるかもしれないとかは?
相田: いや、それません。基本的に介護からはそれません。
宮本: じゃぁ、ずっと介護をやっていって、素敵な旦那様……。
相田: と出会って、素敵な結婚をします。幸せになります。
宮本: わかりました。
相田: ありがとうございました。
宮本: まだ終わってないですよ?(笑)
宮本: 夢はありますか?
相田: 幸せな結婚です(笑)。
宮本: なるほど(笑)。じゃぁ、そういう個人的な夢以外に、こう何か「幸せな社会をほにゃらら」みたいなのは?
相田: 幸せな社会かー……。あんまりそういうのは……今、生きていることに精一杯なんで。
宮本: ふむ。特養に対してはどうでしょう?
相田: 私は特養で働いているスタッフも頑張っていることを知っているから、特に……本当に若い子は若い子なりに頑張ってる。そこに一生懸命になっていると「死」に気付かないということもあるけど……。少しずつ変わっていけばいいなとは思ってますけどね。
宮本: あんまりこう劇的な変化を望んでいるわけではないと。
相田: うーん、ここにいると本当に特養での苦労話を聞くけど、でも私は特養で楽しみながら本当に頑張って働いている職員も一杯いるってことを知ってますしね。もちろん、人数を多くしたりだとか、そういうふうには変えて欲しいとは思いますよ? でも私は今の特養を非難することはできないです。それに、特養も特養なりに変わろうとしてる姿も見てるから、うん。最後にいたところは施設長とかがよく「家族を巻き込め、巻き込め」って言ってましたし、結構行事とかも参加してもらったりとかしてたから。だから、、そういうふうに少しずつ変わってもらえればなって。
宮本: 今変わっていっているところが、全部のところというか……。
相田: そう、増えていけばいいなとは思いますね。
宮本: なるほど。それ以外に何かありますか?
相田: 夢の話なんですけど、とりあえず皆が好きな人と出逢って、皆が幸せな結婚をしていけば、絶対幸せになれるって思いますねー。そこで幸せな家族ができれば、そういう特養もね、幸せになってくるんじゃないですか。家族が一杯来て。………ということで、結論は、皆が好きな人と結ばれて幸せになることです(笑)。
宮本: 私も幸せになります、ということで(笑)。
相田: そうです!(笑)
宮本: わかりました。……なんでそこにもってこうとするのかな(笑)。
相田: いやいやいや、赤い糸ってあるんですよ?(笑)
宮本: 確かに大切な事ですけどね(笑)。
1 現在は設置されています。
2 現在もなごみの里所有の家屋には設置されていません。
3 特別養護老人ホームの規定では最低職員 1 人に対して利用者 3 人ですが、なごみの里では 2005 年 12 月現在、職員 6 人に対して利用者 4 人、さらには周辺業務を多数のボランティアさんが支えています。
4 この頃、別の事業に絡んで相田さんの体験談を文書にまとめたところでした。
5 これは本土からのなごみの里スタッフ・ボランティア全員に言ってる言葉です。「マイナスのエネルギーを持つ人が入ると、幸齢者様は敏感だからそのエネルギーをすぐに受けてしまう。だから、玄関を入る時に今日の自分がそうだと思ったら、遠慮せずに休んでほしい」