全ての人の尊厳が認められる未来へ
青森県出身。1980 年生まれ。
動物や静かなところが好きで、ここに来る以前は農業関係の仕事に従事していた。北海道・島根にて酪農作業の経験があり、以前の職場は島根県内の梨園。
2004 年 11 月に友人の紹介で見学に訪れたのが、なごみの里との出会い。その後、柴田代表の講演を聞き、本を読んで、2005 年 3 月からなごみの里スタッフとして働くことになった。
宮本: 今まで住んでいたっていうと、島根のほうになるんですか?
藤ヶ森: そうですね。住んでたのは島根です。はい。
宮本: 梨園っていうくらいだから、結構のどかな場所ですよね。
藤ヶ森: そうですねー。山の中というか。
宮本: 山の中(笑)。じゃぁ、こっちに移ってきて、どうでした?
藤ヶ森: 私は静かなほうが好きなので、何かとってものんびりしてて、近所の人とかもすごく優しくて、いいところだなぁって単純に思いましたね。
宮本: 静かなところから静かなところみたいな感じ。そうすると特にこう、何か違和感とかも?
藤ヶ森: ないですね、はい。
宮本: なるほど。すごしやすさとかはどうでしょう?
藤ヶ森: そうですね。まぁ一番はやっぱり人との繋がりが……もちろん、田舎は田舎で難しいところがあるとは思うんですけど。でも、わたしはこののんびりした感じとか、すぐに顔見知りになれるところとか、そういうところが好きですね。うん、すごい住みやすいです。
宮本: 結構慣れもあったんでしょうね。
藤ヶ森: 海も好きですしね。
宮本: 海も山もあるし。
藤ヶ森: 山も、そうですね。
宮本: 牛もいる*1し。
藤ヶ森: 牛も好きですよ。
宮本: あんまり変わらなかったと。
藤ヶ森: そうですね、はい。
宮本: では「当社に入ろうと思った動機について、詳しくお聞かせ下さい」(笑)
藤ヶ森: あはは。面接試験みたいだ(笑)。
宮本: 先程の話だと、梨園で働いていたけれども体力的な問題があって、ということでしたけど。
藤ヶ森: そうですね。体力的にも精神的にもちょっとつらくなってた時期だったんですけど、友達の紹介があって実際に見て「いいとこだなぁ。のんびりしてて、家庭的な感じがするなぁ」って思って。仕事するのにも落ち着いてできそうな感じがしましたし、その後に講演を聴いて本を読んで、この仕事がしたいと思って……ですね、はい。単純です。
宮本: え、でもここに来るまでそういう経験とかってなかったんですよね?
藤ヶ森: ないですね。でもこう……手をかしてほしい人がいて、自分がその手助けみたいな感じになれたらいいだろうなぁって。それで。
宮本: ふむ。で、こちらに移ってきて仕事に慣れていったと。実際に仕事をしてみてどうでしたか? 全く経験がなかったことでしたが。
藤ヶ森: 仕事をする前は単純に、ただ手助けになればなっていう気持ちだったんですけど、やっぱりお下の世話をするっていうことで、自分もすごく緊張してしまって……全然経験もないし、急に来たわたしがやっていいんだろうかって戸惑いがあったんですけど、だんだん慣れていったら普通に話もできるようになってきたというか……身体を預けてくれたり、そういう信頼感みたいなのができていって、それで随分と楽になりました。
宮本: 親しさを積んで一歩一歩と。
藤ヶ森: そうですね、はい。
宮本: 自分としてはこういうのはあってると思いました?
藤ヶ森: どうですかね。あってるとまでははっきり言えないんですけど。
宮本: 言えないけれども。でも、仕事として一応 7ヶ月続けてきてると。
藤ヶ森: そうですね。色んなお話が幸齢者さんから聞けて、うん、楽しいです。
宮本: じゃぁ、その幸齢者様のお話もそうなんですけど、ここに入って何か得たものはありますか?
藤ヶ森: 得たもの。……うーん、心が広くなったような気はしますね。前はセカセカしてたし、小さなことで色々考えたりとかしてたし。元々すごくせっかちなんですけど……。
宮本: えっ!?*2
藤ヶ森: うん、そうなんですよ(笑)。見えないかもしれないけどせっかちで。ここは島全体がゆったりしてるのもあって、ペースがゆっくりになって……何ていうのかな、精神的に安定してきました。あとは……原田さんも言っていたんですけど、綺麗にものをきちんと整理することかな。
宮本: 整理整頓。
藤ヶ森: 自分の部屋はそうでもないんですけど(笑)。やっぱり職場に来ると「あっ、ここもこうしなきゃ」っていう気持ちが自然に出てきますね。
宮本: なるほど。えーと、「心が広くなった」の話ですけど、私は元々都会のほうに住んでたから田舎へ行くとどこでも心が広くなるものなのかなーと安易に思うんですよ。藤ヶ森さんは以前から田舎での仕事をしてたわけなんですけど……そこともやっぱり違っていますか?
藤ヶ森: 違います。山の中でのんびりはしてるんですけど、仕事は結構忙しかったですよね、それでも。
宮本: それはここが忙しくないように聞こえますが?(笑)
藤ヶ森: いやそういうわけじゃないよ(笑)。違いますよ、はい。なんかね、精神的に余裕がなかったですね、全然。それがここへ来てから、自分がする動作とかもゆっくりしていって……。
宮本: 藤ヶ森さんが言うと、何かすごい説得力があります(笑)。
藤ヶ森: 前は全然こんなゆっくりしてなかったんですけどね(笑)。自然にこう……何もかもがゆっくり流れてるような感じがしますね。
宮本: それは何かあるんですかね。梨園との違い。
藤ヶ森: ……うーん、まぁ前までは人相手の仕事じゃなかったんですよ。それが関係してるかわからないですけど……。何かをお話した時に笑ってくれたりとか。わたし人の笑顔を見るのが一番好きなんですけど、そういったことで気持ち的に余裕ができてきたのかな。……うーん、「こうだからこう」っていうのがないんですけど。
宮本: ふむ。……で、あと整理整頓と。
藤ヶ森: うん、まだまだ一杯あるんでしょうけどね。気付かないで一杯もらってるんでしょうけど、口で言うとなるとなかなか出てこないですね。
宮本: 原田さんも言っていたんですけど、生活力っていうのは大きいんですかね? 自立するっていう。
藤ヶ森: うーん、そうですね。大きいと思います。
宮本: 見ていると生活力は元々ありそうな印象を受けますけど。
藤ヶ森: 一人暮らしをしてたので、少しはそういうところはできるかもしれないんですけどね。……うーん、ほんとに小さい事を積み重ねていくことが一杯あって、それが自然に自分に身についてくるというか……元々は O型なので大雑把なんですが、そういう部分が変わっていったとは思います。
宮本: そういうところが得たもの。
藤ヶ森: そうですね。来て良かったなって思いますね。うん。
宮本: 次は質問の仕方が難しいんですが…………うん。その笑顔の秘訣は何ですか?
藤ヶ森: 笑顔の秘訣ですか?(笑)
宮本: うん、見ているといつも……そんな風に笑ってる気がするんですけど(笑)。
藤ヶ森: 何でしょうね。自分が笑顔を見るのが好きだから、やっぱり自分も人に分けてあげられるくらいに笑顔でいたいなって。それに……自分に余裕を持っていたいから、かな。心の中は違っても、表情だけでも。
宮本: ちなみに、以前からそうだったんですか?
藤ヶ森: いえ、そんなんじゃなかったです。全然笑えなかったし。ここに来てからですよ。今みたいに笑えるようになったのは。
宮本: 藤ヶ森さんにとって「死」とは何ですか?
藤ヶ森: 「死」とは……避けられないもの。
宮本: 避けられないものですね。
藤ヶ森: うん。いつになるかはわからないですけど「誰にでもあって、必ず来るもの」かな。わたしはよく「いつ死ぬかわからないから、好きなことやっておこう」って思うんですよ。一番に思うのはやっぱり「必ず来るもの」ですね。ただ、ここの幸齢者様を見てると、そういう感じがしなくって。いつまででもいてくれそうな感じがするんですけどね。ちょっと前に亡くなった…………。
宮本: アキさん?
藤ヶ森: そうそう。アキさんもね、だんだん弱っていくんですけど、でも亡くなるっていう感覚が全然なくて、ずっといてくれるような気がして。亡くなった後にその姿を見て「あぁ、亡くなったんだな」って。でもわたしの中には笑顔とか笑い話とかしてくれたのがずっと残ってて、だから亡くなっても……もちろん、その時は「悲しいな」って思ったんですけど、その後は悲しいとか思わなかったです。笑った顔がずっとわたしの中に残ってるから。私の中ではアキさんは生きてますよ。
宮本: 怖いとかいう、そういう感じは?
藤ヶ森: 怖いっていうのは、ないです。私には。
宮本: ない。
藤ヶ森: うん、怖いとは思わないですね。
宮本: 幸齢者様とは、どんな方達ですか?
藤ヶ森: どんな方達……うーん……自分を持っていて、ちゃんとしてるというか、ここの方は一人でも生きていけそうなくらい元気で、ちょっと足が悪いとかっていうことはあるんですけど、気持ちとか表情とかは全然若いです。うん、「若い!」
宮本: 気持ちが若い、と。
藤ヶ森: 全然若いですね。わたしより全然元気で、私のほうが元気をもらってます。
宮本: じゃぁ、将来は?
藤ヶ森: 将来は……うーん、動物と関わる仕事がしたいです。ここにいながらこんなこと言うのもあれですけど。
宮本: それは柴田さん自身が「卒業」っていって「学びを得て次のステップへ」みたいなのを支持してるから、いいんじゃないですかね。……「動物に関わる仕事」ですけど、結構一杯ありますよね。
藤ヶ森: 一杯ありますね。……うーん、何か助けるというか……今で言ったらペットブームとかで色々な動物を飼ったりしますけど、その反面捨てられる動物とか虐待される動物達が沢山いる現状があって、そういう動物達を何らかの形で助けたいなぁって。
宮本: 今はいっぱいありますね。
藤ヶ森: そうですね。
宮本: うーん……動物ですかー……。なんで動物なんでしょう?
藤ヶ森: いるだけで癒されるというか、何かこんな……犬みたいになれたらなーって、自分で(笑)。いるだけで何かなごむみたいな。素敵だなって。
宮本: 自分が犬になりたい(笑)。
藤ヶ森: そうそうそう(笑)。あんなふうにね。生まれ変わったら犬になるかもしれないけど(笑)。
宮本: ちなみに、そういう「助ける」みたいな思いはここに来てから生まれたもの? それとも昔から?
藤ヶ森: 昔からではないですね。酪農をしている時も「動物の仕事がしたいな」としか思っていなかったです。前の仕事の時に、ようやく思ったんですかね。
宮本: 梨園で天啓を受けたと。
藤ヶ森: 梨園でというか、自分の生活をしてる中で色々つらいことがあって、その時に「何が本気になってできるんだろう」って考えてたんですけど、「あぁ、わたしが本当にしたいことはこれだな」と思って、こういうことがしたいっていうのが出てきて。それに向かって少しずつでも積み重ねていこうって思ったんです。
宮本: ……うーん、あんまりいい質問じゃないんだけど、直球じゃなくてここを通過していくわけですよね?
藤ヶ森: そうですね。直球で行くのがちょっと自分ではまだ無理かなと思って……結構人と話すのとか苦手なんですよ、わたし。仕事とかも人相手じゃなかったですし。でも、田舎に来たら近所の人と付き合う機会も多いし、その中で人とのコミュニケーションを取ったりとか……そういうところも勉強したかったし。
宮本: すぐ行かなくてもまだまだ先は長いっていうことで、もうちょっと経験を積んでみたかった。
藤ヶ森: まだまだ足りないものが一杯あるんで、はい。
宮本: ……あ、夢を聞いてしまったような気が(笑)。
藤ヶ森: あはは(笑)。
宮本: まぁ、夢はそんな仕事をすること。
藤ヶ森: したいですね、はい。動物を通して人を助ける仕事とかあったりとかするんですけど、そういうのもいいかなって。ちょっと前に本を読んだ時に、アニマルセラピーっていって、ケン君*3みたいな……老人ホームに犬達を連れてきて、動物達の癒し効果を治療の補助にするっていうのもあったし。あとは盲導犬の訓練士になって目の見えない人とかを助けるとかね。ああいうことも興味があって、うん。
宮本: 動物も助けて人も助けて、と。
藤ヶ森: うーん、助けるほどの力は自分にないというか……結局は自分が助けられている気がするんですけどね。動物達の癒しの力とかただいるだけでなごむ力とかね。人と関わっていく中でも、お互いに信頼しあったりして、自分も高められていったり成長していったり。
宮本: 助け合い?
藤ヶ森: うん、そう。今まではそういうのがあまりなかったんですよね。
宮本: なかった?
藤ヶ森: なかったんですよ、自分の中でね。だからほんとに「人間らしく生きたい」。言葉があって通じ合うものがあるから、そういう中で生きていきたいですね。