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介護日記 (117) 〜全てを受け入れるやさしさ〜

島の秋は短い。木もれ日の差し込む小さな個室に、幸齢者様の寝息が静かに聞こえる。

正さん (88) が、なごみの里に入所して 2 日目。正さんは昨年この島を離れ、大阪の息子さんの家に引きとられて 1 年程だった。立つことの出来ない正さんは、子供にこれ以上迷惑をかけてはいけないと、都会の暮らしに慣れようと努力をされたと言う。息子の前ではいつも、

「大阪は良いところだな」

と口にしていた。だが、だれ一人知り合いもなく言葉も違う所での生活。唯一の話し相手は今は亡き愛妻の写真だった。

島では手先の器用な正さんはよく絵を書き、手仕事を楽しんでいたものだ。大阪ではあんなに好きだった絵筆すら、決して手にしようとはしなかった。息子さん夫婦は何とか気が晴れるようにと気を配った。だが、正さんの心が 80 年以上も住み慣れた島を忘れることは出来なかった。そして帰島。

車イスに乗って帰って来た正さんの顔は輝いていた。念願の我が家を見に行き兄妹に会う。正さんは、美しい海を見つめながら、

「やっぱり島はいいな」

と呟く。息子さんはその姿に胸をなでおろした。

息子さんの立場を理解し受け入れようと、障がいを持つ身で大阪での暮らしを受け入れた正さん。そしてまた、親の憂鬱を受け入れ、島へ帰島させた息子さん。それぞれの想いを全て受け入れ理解することこそ、真のやさしさにつながることを教えたお二人に感謝、感謝。

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