全ての人の尊厳が認められる未来へ
今年の冬は長く、恋する春がやっと島に来た。つくしが胸を張り、カラスが空高く舞う。なごみの里の中は若いスタッフ、ボランティアさんの熱気であふれている。
97 歳の秋さん。若いスタッフがのぞき込み、あいさつをする。
「おはようございまーす」
「わしは、あんたらの笑顔が一番うれしいもんな。こんなばばに有難いな」
としわだらけの手を合わされる。その声を受けてスタッフの笑顔は更に深くなる。
玄関先に秋さんの息子さんの声がする。毎週一回、一人暮らしの息子さんが自分の育てている鶏の卵を「食べきれないので」と持ってこられようになって久しい。
耳の聞こえない秋さんとは、ほとんど会話することもなく「顔だけ見ればね」と通って来られる。今日もほんの数分、秋さんのそばに居られたかと思うと、もう玄関先に息子さんの姿があった。
「良く続きますね。有難うございます」
「いやいや、自分の気持ちがいいからするだけですよ」
と淡々と言われる。
「ところで、息子さん御自身は、子供さんに看てもらおうと思われますか」
「いいや、きっと無理でしょう。今の人、昔の人というのではなく、今も昔も変わらんもんがあると思うんですがね……。わしは、自分が気持ちがいいからしとるんですよ」
幸せとは自らが動き、その先に感じるものと教えた幸齢者様に感謝、感謝。
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