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介護日記 (124) 〜死は苦ではない〜

島に花が咲き蝶が舞う美しい季節がおとずれる。秋さん (100) が食事をとれなくなって今日で 17 日。ポカリスエット 300cc、ようかん少々、これが秋さんの一日の食事量だ。

「死ぬのはわがとこ(自宅)だな」と言われ、自宅に帰られてもう二週間たった。「わがとこに居るって夢のようだ」と言い続けて、点滴を受けることもない。私は、毎日食べてはもらえないと知りながら食事を運び「もういいですよ、どうせ食わんから」と独居の息子さん (74) は力なく言う。「いいえ。この食事が私の希望です。持って来させて下さい」

死の二日前、「調子はどうですか」と聞くと秋さんは闊達に「うーん、いいやあな(良いようだ)元気一番だ」「どこも痛い所はないですか」「どこも痛くない。気持ちいいだわいな」と、フワフワの甘い笑顔で答えられる。全身を温かいタオルで拭く。身体はあちこちに水がたまり、骨が痛々しいほど飛び出している。それでも秋さんの深い笑顔を見ると、秋さんは神様にでも抱かれているのかと思えるほどだ。そばに居る私までもが何とも安らかで幸せな気持ちになる。この秋さんの笑顔をみんなに見せてあげたい。そうすればきっと誰でも死は怖くない。そう思えるような気がして、私はずっと秋さんの手を握り傍らにいた。

早朝秋さんは眠るように逝った。私がかけつけた時、まだ温かみの残る秋さんを抱きしめ頬をよせると、秋さんの声が確かに聞こえた。「ありがとう」と……。 私もまた「ありがとう」を言いつづけた。

静かに心の故郷に帰った幸齢者様に、また私は大きなエネルギーを手渡された。そして「死は苦ではない」とその身を持って教えた幸齢者様に感謝、合掌。

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