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介護日記 (154) 〜小さな幸せを数えて〜

島は冷たい風が吹き荒れる。私はこの季節が大好きだ。竹の節が出来るように、この凛とした冷たさが私をまた強くしてくれるようで嬉しい。

「柴田さんや。また本土にいくんかね」

「はい」

「息子に連れられて、本土に行った時のことだ。一杯の人で迷子になったらいかんと息子の手を握ってた。若い男の人がわしと息子の間に入って、無理やり通るから手が離れた。情の無いとこだ。外に出るより、舅じいさんの為になる話聞くのが何よりの幸せじゃったよ。本土行ったら、気付けや。講演すんだら、ホテルから出たらいかんよ。あんたが帰るまで、祈っとるよ」

講演に出る朝、こうした会話の中に無上の幸せを手にする。よそ者の私をこれ程までに、思って下さる里さん (97) 。

「今日は海が凪ぎだ。良かったね。久しぶりに太陽が出るといいね」

海を見ながら、私の航海を案じてくださる真心。しばらくすると、太陽が顔を出す。幸齢者様の祈りが届いたのか、この太陽に 2 人で手を合わす。私の心の中に温かい風が広がる。

太陽に出会えることすら、大きな幸せに思える私に育てて下さった里さん。生まれ出た時、その手にしっかりと握りしめていた幸せの種。幸せとは喜びを感じる心。

「毎日の物事ん中でありがたいと手を合わせる。そいで幸せになれるっだわい」と里さんは教える。日々の生活の中で小さな幸せを数えながら生きることこそ、自らを高めていくと寝たきりの体で私に教える。

幸せを感じる力を育てて下さる幸齢者様に感謝、合掌。

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