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介護日記(162) 〜心の扉を開けて〜

島は可憐なねむの花が咲き乱れる。

なごみの里にも、新しいスタッフが本土から来てくださった初夏。認知症を持つ静香さん (93) は見慣れない顔に、何とも穏やかで居られない。

なごみの里では、働きだしても直ぐに介護に入る事は無い。 1 ヶ月間、幸齢者様の手足となる最初の行為として、掃除、洗濯、お料理に取り組む。里に慣れ、幸齢者様に顔を覚えて頂くのが仕事である。新人さんには、中々、オムツを見せては下さらない。勿論、当たり前の事なのだが。

ことさらに静香さんの場合は正直だ。

「あの子はいやだ」

この言葉がありがたい。早速、そのスタッフと話す。幸齢者様を敬うとはどう言う事かを話し合う。その新人スタッフはとても正直に自分の中にあった認知症への無理解を認める。

認知症であっても、感性は失われない事、向上心を失くさない事を話し合う。新しいスタッフは静香さんの信頼を得られるように努めると約束してくれた。言葉の奥に有る心が見える静香さん。静香さんのみずみずしい感性に手を合わせる。

認知症を患いながら、命を燃やし懸命に生きる姿を見せて下さる静香さん。新人スタッフは静香さんのお部屋のカーテンの前 (家で言うと玄関のような所) で、入室前に一人心静かに自分の心を整える。しっかりと自らの手と手を合わせ、心からの感謝を想う。

一に、与えて頂いた幸せ (ご両親への感謝)

二に、できる幸せ (自分自身への感謝)

三に、させて頂ける幸せ (相手として、静香さんへの感謝)

自分が行う一介護一介護に手を合わせることで、静香さんへの尊敬の心を作り上げる姿があった。それまでどんな言葉も心に届かなかったが、手を合わせ、頭をたれるうちに、彼の心が磨かれていった。

手を合わせ、敬う心こそ人間を謙虚に導く道と教えた幸齢者様に感謝、合掌。

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