全ての人の尊厳が認められる未来へ
島は穏やかな時が流れ、美しい潮風がなごみの里を包む。さわやかな朝の光の中で、里さん (97) のごつごつした皺だらけの手を握る。
「畑はどうなってるかね。今は大根の種撒くころかいな?」
「きっと息子さんが植えとられるよ」
「どうだいな。昔はな、家の者と喧嘩しても、太陽の下で働くとモヤモヤした気持ちがすーとしたもんだ。今の者は野菜を作らんで、勤めに出る。
時間をお金に変えて忙しい、忙しいと言う。
ほんにな」
里さんの目は本土に住む子供達を想うかのように、ガラス越しの海の面に移る。しばらく、二人の間に沈黙の時間が流れた。
私はふと先日読んだ文章を思う。
赤ちゃんは肌を離すな。
幼児は手を離すな。
少年は心を離すな。
この言葉を幸齢者様に代えると里さんの言葉の趣深い意味が私にも分かるように思える。
人生で最も大事な事が何かを長き人生の中から身に付け教えて下さる。自分にとって何が一番大切なのか、今自分は何をすべきかが分かる事で腹が座り、分散させていた自分の心が決まる。そして辛い事を乗り越える力が育つと言う里さんの真心に手を合わせる。
勤めに出るよりも幸齢者様に心を寄せ、手を握る。そして肌を寄せ合う事が、今何より大切な事。ゆったりとして静かな二人の時間がお互いの心を深めることを教え、人生の宝物を惜しげもなく差し出し導く幸齢者様に感謝、合掌。
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