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介護日記 (170)  〜一人と一人〜

講演の旅の夜、携帯電話のベルが鳴る。スタッフが、里さん (97) が呼びかけに反応がないと言う。

すぐに村の医師の往診の手はずを整える。脳血栓か脳梗塞の疑いが強いとの診断。救急車、救急艇、救急車と乗り換え、やっと隣の島の病院に入院。

翌日、出張先から急ぎ戻った私が訪ねると、里さんはいつもの笑顔で微笑んだ。

しかし、日をおうごとに認知症の里さんは看護士の顔がクルクル変わる事についていくことができず、やがて食事を拒否するようになる。暴言や暴力。点滴も入らない。里さんにとって、体の不調とともに来た環境の変化。新しいたくさんの方々と信頼関係を結ぶことは容易ではなかったのだろう。そして、そんな中での退院。なごみの里に戻ってからも、往診に来た医師に噛み付き、血圧を測ることも出来ず、医療はこの時から遠のいていく。

その日から里さんの全てを受け入れ、一人でお世話をさせて頂く。幼い頃、病気で寝込んだ時、何よりも母の温もりが嬉しく思えたものだ。今、里さんの全てを受け入れ、ぶたれながら、私の中に里さんに対する愛おしさがこみあげる。私の母性を里さんがはぐくんで下さったのだろう。その後も暴言と暴力が何日か続き、その果てに里さんに訪れた笑顔。「ありがとう」と声をかけて下さり、合掌される。次の日から里さんはいつもの里さんに戻られ、食事も入るようになった。

一人対一人。この尊い関係をその身をもって教えてくれた里さんに感謝、合掌。

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