1. Home
  2. 書籍・文書
  3. 介護日記 (189)

介護日記 (189) 〜美しい死を伝えて〜

深夜2時40分、携帯電話の音。出雲なごみの里の幸齢者様の鉄さん(74歳)の急変の知らせを受け、直ぐに駆けつける。

結婚をしないまま、しじみ漁師をして暮らされた長い独り暮らしの日々。女性スタッフがお風呂に誘うと「女房でも無いのに、触るな」と毅然として言われる。お気に召さないと、かっと怒られ、それでもしばらくすると「すまんな」と優しく労わって下さった。数日前には、畳の上で寝たいと言われる鉄さんにごろんと寝転んで頂き、「気持ち良い」と笑顔を浮かべられていた。

前日も浮腫みが酷く、かかりつけの秦先生に看て頂いたばかり。夕食も進み、いつにもまして大声で話して下さっていた。

駆けつけて下さった唯一の介護者、鉄さんの甥である友さんは、もう旅立たれた鉄さんを前に「救急車を呼びましょう」と言われた。私は「秦先生をお呼びしますので、朝までまちましょう」と友さんを止める。かかりつけの先生がいて下さることの安心を感じる。

友さん、そして私達みんなで鉄さんの体を拭かせて頂く。鉄さんのお顔はご一緒に暮らした中で、最も美しい顔をされていた。そして、その胸は燃えているかのように熱く、私の手には今もその温もりが残る。

人は産まれた時、両親から体、良い心、魂を頂く。体が死という変化を迎えた時、良い心と魂はどこに行くのだろうか? 先日、小学校の講演会で6年の男子児童が「子や孫に手渡される」と答えた。

抱きしめて送る時、その方の心と魂が、私達見送る者達の心と魂に重なることを感じる。私達は親族の方々とともに、鉄さんを抱きかかえ、里の駐車場に停めてある葬儀社の車におのせした。

鉄さんから頂いた命のバトン。生きる力をその身を持って手渡して下さる幸齢者様に感謝 合掌

活動についてのお知らせ

  • 柴田久美子 講演予定
  • 募集中の研修内容一覧
  • なごみの里 紹介動画

書籍紹介

いのちの革命

『いのちの革命』書影

看取り士日記

『看取り士日記』書影

看取り士

『看取り士』書影

「ありがとう」の贈り物

『「ありがとう」の贈り物』書影