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介護日記 (204) 〜一粒の砂糖〜

なごみの里から見える大山に美しい雪が残る。

私の手元に届いた一冊の写真集『花想』、パーキンソン病18年の奇跡。なごみの里にお住まいだった木佐さんのものだ。40歳の時に発病。カメラと出会い、16年間で1万枚もの花の写真を撮り続ける。10年間、花の写真のカレンダーを発行し、沢山の絆を結ぶ。享年59歳。

なごみの里にお住まいの頃、講演で来てくださった社会学者上野千鶴子先生とのご縁を結ばれる。上野先生の帯の文章にはこう書かれている。「病を得たひとの眼には、こんなにも世界は美しいのか。病を得たおかげで、こんなにもえがたい縁が得られるのか。わたしは何を見落としていたのか…を、木佐さんは教えてくれる」

写真集は彼女自身のようにキラキラと澄んで美しく、見るものの心を清める。

体重28キロしかない体で、一眼レフのカメラを覗く彼女に「もう軽いカメラにして下さい」とお願いすると、「柴田さん、私はこのカメラが良いの。私の尊厳を大事にして!」と叫んだお顔が今も私の心に残る。そしてその日から、私達は姉妹のように分かり合えたものだ。

その後、木佐さんは肺炎を患う。彼女は口から食事を摂ることができず、本人の納得の上に胃瘻(胃に直接栄養剤を流すという処置)を選択した。彼女は食べることが唯一の楽しみで、なごみの里にいる間も、ほとんど起きている間中、ゼリー状の食事を楽しんでいた。

その彼女が、退院を2日後にしたその日、通りがかりの医師に、

「先生、私は退院した後、食べて良いですか?」と聞くと、医師は彼女に告げる。

「ダメです」

そう言うと、足早に立ち去って行った。その光景を見たスタッフは驚いたが、医師の言葉に返すことはできなかった。そして退院を前に、木佐さんは59歳の人生を閉じた。私はその話を聞きながら、例え胃瘻という処置をしていても、ほんの一粒の砂糖を彼女に差し出せば、きっと彼女は希望を手にしていたのにと思うと、残念でならなかった。

希望、それは生きるもの全てに等しくあるべきもの。木佐さんの美しい写真集『花想』は、今全国の多くの人の心を元気づけている。彼女の命のバトンを引き受けた私たちは、この写真集を大切に伝えていく役割があるのだと思う。

命がけで残されたものに希望を渡してくれた木佐さんの生に感謝 合掌

※ 木佐聡希様写真集『花想』の購入・お問合せは kisa.hanaomoi■gmail.com(■を@に変えて下さい) まで

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