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介護日記(210)〜美しい時とともに生きて〜

せみの声が私を励ます暑い夜、冷房のきいた深いソファーに座り、美しく化粧をした美子さん(88歳)がにこやかに私に微笑まれる。

「あなたは結婚をしていますか」「私は旦那様と結婚してよかった、幸せな人生だった」と何度も繰り返される。「結婚するなら、頭のいい人がいいよ。結婚は、男性によって決まる。早くいい人と結婚なさい」そう微笑んで話された。

美子さんは、旅立たれた旦那さんが見えるという。

「私は今も主人と一緒だから淋しくないの」そう微笑まれる。

隣のお家に御長男夫婦、お孫さんが暮らされているが、一人暮らし。彼女は毎日、亡き御主人を思いながら化粧をするという。そんな話の傍らで、私は寮母さんから御主人さんが旅立たれた後の淋しさを聞いた。

「主人は突然亡くなりました。介護する事もなく、病院に運ばれてそのまま亡くなりました。美しい夕陽を見る時、この場に主人がいてくれたら、どんなに喜んでくれるだろう。一緒に『美しいね』と言ってくれるだろうと、そう思います。主人といつも一緒だった時間が、私の傍にはあります」と言う。

先日読んだ本(『「痴呆老人」は何を見ているか』大井玄 著)の中に、次のような文章があった。

痴呆老人をケアしていると、私にはしばしばこの世の人とあの世の人との間を行ったり来たりして、双方につながりを持っているように見えます。この世とあの世の人との間を往来する姿が印象的でした。

この文章のように、美子さんが見るあの世的つながりが美子さんを幸せに導くとしたら何とも素晴らしい世界だろうか。私達はどこまでも限りない、愛の中に生かされていることを教えてくれた幸齢者様に 感謝合掌

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